子どもの感染が多く、「歩く肺炎」の異名を持つマイコプラズマ肺炎が世間を席巻している。医療機関から報告された患者数は過去最多の更新を続けており、前年同時期の40倍近い。その要因や対処法をどう考えるべきか。(山田雄之)

◆家族3人、1カ月間に次々と感染

 「家庭内で感染が広がり、本当に大変だった」。東京都の男性会社員(44)は約1カ月にわたり、自身を含む家族3人がマイコプラズマ肺炎にかかった日々を振り返った。

手洗いする子ども(本文とは関係ありません)

 9月下旬、家族旅行の帰りに息子(5)が熱を出したのが始まりだった。「疲れかな」と様子を見ていたが、熱が下がらない。地元のクリニックに行くと「マイコプラズマ肺炎の終わりかけ」と診断された。  男性も10月初旬に感染症状が現れた。4日間ほど体温が40度まで上がり「軽いせきが出て、強い倦怠(けんたい)感があった」。病院に行ったが検査キットが不足しており、「みなしマイコプラズマ肺炎」とされた。  最後に症状が現れた娘(2)が深刻だった。発熱に加え、せき込みが強いために病院で検査を受けると、肺に白いもやがかかっていた。12日からは1週間の入院。男性は「息子に熱が出たときは『風邪かな』と思っていたので、まさか家族が入院する事態になるとは」とため息をついた。

◆風邪と思い込んで出歩き、他人に

 「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染し、発症するマイコプラズマ肺炎。飛沫(ひまつ)や接触で感染する。2~3週間の潜伏期があり、発熱やだるさ、頭痛などの症状が出る。せきだけにとどまることもあり、風邪と思い込んで出歩き、他人に感染させやすいことから「歩く肺炎」と呼ばれる。多くは軽い症状で済むが、せきが数週間続く例もある。

子ども用マスク

 今年は感染が広がっている。国立感染症研究所の22日の発表によると、7~13日の1週間に全国の定点医療機関から報告された患者数は935人(速報値)。患者数は7週連続で増加し、1医療機関あたり1.95人で、今の集計方法になった1999年以降の最多を3週連続で更新した。前年同時期の39倍に上り、過去10年で最多だった2016年を上回る状況だ。

◆免疫を持たない人が増えた

 新型コロナ流行後の2020~2023年の同時期は1機関あたり0.01~0.06人と少なかった。北区の「いとう王子神谷内科外科クリニック」の伊藤博道院長は「『オリンピック肺炎』とも呼ばれ、ほぼ4年に1回の周期で流行する」と紹介した上で「(前回流行年になるはずの)2020年は新型コロナの感染対策効果で低調に抑えられた。その半面、細菌への免疫を持たない人が増えたのだろう」とみる。  最近は寒暖差をきっかけに気道が炎症を起こして発症する「せきぜんそく」も増え、例年冬は新型コロナ感染の拡大時期となる。

◆コロナとの見分け方は…難しい

 見分け方について、伊藤氏は「一般には難しい」としつつ「コロナは初期症状で喉や頭の痛みが生じる。マイコプラズマ肺炎は徐々に悪化するが、せきぜんそくはいつの間にか罹患(りかん)しているイメージ」と説く。  マイコプラズマ肺炎への対策を尋ねると「学校や職場では換気、手洗いやうがいをし、せき込む人がいたらマスクをすること」と挙げた。家庭内では「感染が疑われる場合はタオルの共有を避け、食事や歯磨きの時間をずらすのも対処法だ。帰宅後は入浴して体に着いた細菌を洗い流し、体を温めて免疫力を高めることも心がけて」と助言した。 

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