北海道浦幌町のIT企業「forestdigital(フォレストデジタル)」と道が、仮想現実(VR)技術で林業を疑似体験してもらう授業を高校生に提供している。北海道では昭和30年代に植樹されたトドマツやカラマツの人工林が伐採期を迎えた一方、林業従事者の後継者不足が心配されていて、最新技術を使った新規参入者増加に期待が集まる。(共同通信=吉野桃子)
9月18日、幕別町の北海道幕別清陵高。教室の前方と左右の壁や天井に苗木の植え付けや伐採の作業映像が映し出され、木々の香りまで再現されると、生徒たちは「おお」とどよめいた。実物のチェーンソーや苗木も手に取った。2年の熊谷春菜さん(17)は「木を切り倒す映像の迫力がすごくて感動した。林業についてもっと知りたい」と目を輝かせた。
同社は2019年11月、IT大手のヤフーの部長やメルペイの取締役などを歴任した辻木勇二代表(54)が設立。同町でボランティアに参加し「豊かな自然を、デジタル技術を用いてどこでも体験できるように」と思ったのがきっかけだった。高画質映像などを駆使した「デジタル森林浴」が、全国約30の商業施設やオフィスに導入された。
北海道によると、道内の森林面積は554万ヘクタールと全国の22%を占め、木材関連産業の製造品出荷額が全体に占める割合が全国と比べて高いなど、林業が盛ん。ただ従事者数は21年度に約4200人で、13年度以降は横ばいが続くものの、うち3割が60代以上で、産業の持続可能性が危ぶまれている。
道は今後10年間で約1600人の新規参入者確保を目指している。ただ長時間の移動や安全策の難しさから高校生が現場で見学するハードルが高く、注目したのがフォレストデジタルの技術だった。道林業木材課の相馬康麿課長補佐は「まずは教室で体験してもらい、林業に興味をもってもらえれば」と話している。
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