石川県能登地方での記録的豪雨から21日で1カ月。元日の地震から復旧・復興を進めていた最中に襲ってきた土砂が、今も住民を苦しめている。そんな中で繰り広げられる衆院選。「選挙どころではない」との声も漏れる被災者は今、政治に何を求めているのか。被災地で思いを聞いた。(大野沙羅)

ボランティアと一緒に自宅前に泥を出す竹島忠男さん(左)=17日、石川県輪島市門前町で

◆中山間地の住民、いまも泥の片付けに追われ

 河川が氾濫し、土砂崩れや浸水で大きな被害を受けた中山間地にある輪島市門前町の浦上地区。自宅が1メートル以上床上浸水した竹島忠男さん(76)は、公示後初の週末を前に、泥の片付けに追われていた。  自宅は、震度6強を記録した2007年の地震後に耐震補強したが、元日の地震で半壊。給湯器も壊れて風呂に入れなくなり、そのまま生活していた。今は近くに暮らす長女の家に身を寄せる。  生活再建が見通せない中での選挙。「地震後に早く土砂や倒木を撤去してくれていたら、こんなに被害は大きくならなかった」と行政の対応に不満を口にし、「政治家は困っている人の立場に立ってほしい」と訴える。

◆「こっちは選挙どころではない」

 浦上地区区長会の喜田充会長(75)によると、地区210世帯430人のうち、地震後の避難で2割以上が集落を離れた。中には戻らないことを決めた人もいる。「65歳以上が7割の限界集落。簡単に復旧・復興できない」  同地区の山口茂雄さん(65)は仮設住宅が床上浸水し、地震で崩れた自宅も土砂で埋まった。地震後に近くの高齢者向け施設に入居させた父(96)は「帰りたい」と言うが、「帰ってきてもどうにもならん」。今後への不安が募る中、「こっちは選挙どころではない」と話しつつ、「まずは生活を早く良くしてほしい」と政治への願いを口にした。  この日、地区には候補者や選挙カーの姿はなかった。「全然来んな」。住民からはそんな声も聞こえた。

◆「能登の復興は日本を守ること」

 輪島市中心部にあり、日本海を一望できる高台に立つ鳳至町の旅館「輪島温泉 八汐(やしお)」。元日の地震で中規模半壊し、休業していたところ、豪雨で裏山が再び崩れ、道路を土砂がふさいで通行できなくなった。  旅館の常務谷口浩之さん(51)は、ここで再建できるのか、していいのか悩みながら、選挙報道に耳を澄ませる。「能登は高齢化と過疎が進む日本社会の縮図。だからこそ、能登の復興をしっかりやることが日本を守ることでは」 

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