能登半島地震で石川県能登地方から金沢市などに広域避難する被災者は、27日に投開票される衆院選で、慣れない環境下での投票に臨もうとしている。住民票を残して地元を離れた人が活用できる不在者投票などを通じ、ふるさと復興への願いを込め、遠方から一票を投じる。(高橋雪花)

◆「復興に力を注いでくれる人に」

 輪島市の自宅が全壊し、金沢市に避難する無職女性(70)は、初めて不在者投票をする。不在者投票は地元市町の選管に請求書を送って投票用紙をもらい、26日までに避難先の市役所などで投票する仕組み。県などが避難者に活用を呼びかけていた。「復興に力を注いでくれる人に入れたい」。その思いで女性は孫の手を借り、ウェブ上の申請書を印刷して郵送した。

◆「地元候補の演説を聴けないのは寂しい」

 みなし仮設の外から聞こえてくるのは、地元と選挙区が異なる候補者の演説。「手を振って『頑張れよー、(投票用紙に)名前書かれんけどね』と言った。テレビで見てはいるけど、地元候補の演説を聴けないのは寂しい」と話す。震災後1年を控え「先が全く見えず、どうすればいいか分からない。選挙目前ではなく長年の行動を見て、地元を盛り上げてくれる人に決めたい」と思いを託す。

◆「1億分の1票だけど…」

 「1億分の1票だけど『こんちくしょう』という意思を1票だけでも示したい」と憤るのは、志賀(しか)町の自営業男性(76)。「首相や国会議員は選挙ありきで、復興は地方に丸投げ」と悔しがる。友人からは「選挙に行ってもどうしようもない」と言われるが、避難先の金沢市から不在者投票するつもりだ。

仮設住宅の集会所に開設された会場で期日前投票する有権者

 一方、自分の足で投票に行く人もいる。金沢市に避難する無職女性(72)は、輪島市の自宅が全壊して解体し、輪島に残る弟宅に郵便物が届くようにしている。投票所入場券も弟宅にあり、地元に行って用事を済ますついでに期日前投票する。「いつか輪島に帰ろうと思っている。地元のことを一番に考えてくれる人に入れる」と決意する。  石川県と県選管は、地震や豪雨で広域避難する約3000世帯に、それぞれ不在者投票を周知するチラシと請求書を郵送した。県選管の担当者によると、配達の状況などにより投票用紙の入手に時間がかかる可能性もあるという。 

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