パビリオン出展準備はいま

鮮やかな赤い花柄が目を引くパビリオン。表面積3500平方メートルすべてに、雨風などをしのぐ加工を施した京都伝統の西陣織を使用します。

外壁工事は完了していて、これから内装や展示工事を本格化させているといいます。その展示品の製作過程を見せてもらいました。

パビリオンに入ると、まず来場者を出迎えるのが巨大なジオラマ。

長径24メートル、短径15メートルのだ円の中に、企業が考える数十万人が暮らす2050年の「未来の都市」を80分の1スケールで表現する計画です。

飯田グループホールディングス パビリオン展示担当 廣川敦士さん
「当社は誰もが健康に安全に、快適に暮らせる社会を目指して事業に取り組んでいます。その中で住宅だけでなく都市としての機能を充実させていくことが重要だと考えていて、このジオラマを展示することになりました。パビリオンに入ると大空間にこのジオラマが出てくるので、インパクトのある展示になると思います」

未来の住宅は”エネルギーを自給自足”

戸建て住宅を中心に手がけるこの企業が、今回の万博で打ち出すのは、未来の住宅に導入したいという新しい技術=「人工光合成」です。

人工光合成は、植物の光合成の原理を応用します。
光合成は、植物が太陽の光で水と二酸化炭素を使って、エネルギーと酸素を生み出します。
人工光合成も材料は同じ水と二酸化炭素。それらに触媒を活用して、太陽の光を当てることで「ギ酸」という化合物を作ります。

このギ酸を分解して水素と二酸化炭素に分けます。水素は発電や給湯に使用するエネルギー源に、二酸化炭素は再び人工光合成に活用します。地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出せずに、家庭のエネルギーを自給自足する計画です。

共同研究を行う大阪公立大学で、その実験装置を見せてもらいました。
水と二酸化炭素に太陽光を当てて反応させます。

作られたギ酸が、ボトルにたまっていきます。

企業や大学によりますと、太陽光発電では太陽が出ていない間の発電や蓄電が課題になりますが、人工光合成では、ギ酸としてためておけば、いつでもエネルギーとして使えるメリットがあるといいます。2030年までの実用化を目指しているとしています。

パビリオンでは、人工光合成の実験装置や、実験を行っている映像などを展示することになりました。

未来の当たり前を万博で

企業と大阪公立大学がこの技術の共同研究を始めて約10年。
実用化に向けては、まだ技術的に越えなければならない壁があるということですが、それでも、万博への出展は研究を大きく進めるきっかけになっているといいます。

パビリオン展示担当 廣川敦士さん
「人工光合成はまだまだエネルギー効率など高めていかなければならない技術ですが、万博を目標にしたことで研究も大きく発展したので、万博出展は実用化に向けた大きな一歩になると思う。半世紀後とかの未来では、エネルギーを自給自足する住宅が当たり前になっていてほしい。その契機となったのが『今回の万博だったんだな』と、未来の人に振り返ってもらえたらうれしいです」

共同研究を行う 大阪公立大学 天尾豊教授
「人工光合成研究には長い歴史があり、実現できそうになったりそうでなかったりを繰り返しましたが、やっと夢の技術から実証できる技術に変わってきました。自分の家でエネルギーを作って消費してというサイクルができれば、これからの電力事情を考えても革新的な技術、住宅になると思います。万博では人工光合成がどういったもので、社会にどんな恩恵をもたらすかというのをお見せできるよう、全力でつくりあげていきたい」

(10月8日「ほっと関西」で放送)

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