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ピーク時の流速は時速20キロに
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流れが変わった原因は「橋」か
ピーク時の流速は時速20キロに
塚田川の状況は複数の映像に収められていて、東京理科大学マルチハザード都市防災研究拠点の柏田仁助教は現地調査による地形データなどをもとに定点で撮影されたように映像を補正し、川の時系列の変化や流速を詳しく解析しました。
流失した住宅付近の映像を解析したところ、午前9時25分の段階では川と道路の境目が分かる状態でしたが、わずか3分後の9時28分には、境目が分からないほど濁流が広がり、流れが一変していました。
さらに、強い流れの場所も川沿いから、本来は流れのない農地へと変わり、強さを増して住宅に向かっていたことがわかりました。
ピーク時の流速は秒速5メートル余り、時速にするとおよそ20キロに達していたとみられることがわかりました。
水深は2メートルから3メートルとみられ、柏田助教は新耐震基準の住宅でも倒壊するほどの力がかかっていた可能性があると指摘しています。
柏田助教
「塚田川は急峻で流域も小さく短時間で水位が上がりやすい。土砂も崩落し、『土砂・洪水氾濫』となったことで被害がより大きくなったとみられる。全国でも起こりうる現象で小さい河川のそばではいち早く避難の判断をして高台に逃げることが重要だ」
流れが変わった原因は「橋」か
なぜこれほど流れが変わったのか。
京都大学防災研究所の竹林洋史准教授は、押し流された住宅のそばにあった橋に注目して水深の変化をシミュレーションしました。
▽橋が無かった場合は1.12メートルにとどまっていたのに対し、
▽橋があると流木や土砂がたまって流れが変わり、水深も2.56メートルと2倍以上になることがわかりました。
竹林准教授
「水の深さが倍になれば建物に働く力はそれ以上になる。橋そのものに流木がひっかからないようにしたり、橋や家の設置位置を見直すことで被害を防げる可能性がある」
竹林准教授は流れが強かった場所でもブロック塀に囲まれた建物が流出せずに残っていて、こうした対策が有効かどうか、検討が必要だとしています。
急変する塚田川 動画と証言で
流域で4人が亡くなった塚田川では周辺の住民などへの取材から上流も下流も、午前9時半ごろからわずかな時間で濁流の量が急激に増え避難が難しくなっていたことがわかりました。
河川カメラの画像が途切れる様子が…
塚田川は石川県が管理する2級河川で、下流の輪島市塚田町に県が河川カメラを設置しています。
県によりますとふだんは水深も浅く、流れも緩やかだということですが、先月21日、午前9時半に撮影された画像では水位が付近の護岸の高さおよそ3メートルに迫っている様子が確認できます。
10分後の午前9時40分に撮影された画像からはさらに水位が上昇して川の水が堤防を越えて氾濫したとみられることがわかります。
これを最後に画像は途切れます。
カメラはこの時間帯に柱ごと流されていたということです。
下流側 短時間で避難が困難に
県のカメラから直線距離でおよそ200メートル上流に住む小西博之さん(41)が午前9時半ごろ、自宅前で撮影した映像には塚田川が茶色い濁流となってあふれそうになっている様子が捉えられていました。
一方、30分後の午前9時59分に撮影した映像では、すでに川はあふれて住宅の1階部分が半分ほど水に浸かっていました。
小西さんは自宅の2階に逃げ無事でしたが「避難を考えた時には自宅が濁流に囲まれた状況になってしまい流れも速く避難は難しくなりました。水位がどんどん上昇し、どこまで上がるのかという恐怖がありました」と話していました。
上流側 川の流れが変化
さらにその上流では住宅が流され、喜三翼音さん(14)など、4人が死亡しました。
住宅の対岸のやや標高が高い場所に建つ市営住宅では川の流れが変化している様子が目撃されていました。
2階に住む板東奈津美さん(20)がベランダから午前9時半ごろ撮影した映像には本来の川に加え、住宅があった対岸側も濁流が流れていた状況がわかります。
板東さんは「農業用の機械や車、アスファルトのかたまり、それに大きな木が流されていました。こんなことになるとは思ってもいませんでした」と話していました。
亡くなった喜三翼音さんと父との最後のやりとり
翼音さんの父親の鷹也さんによりますと、当日の午前9時43分と52分、スマートフォンで通話をしていました。
その時の映像には自宅前に土石流が流れている様子が確認できたということです。
また同じころ、友人のもとには午前9時47分ごろ、大量の土砂が周囲の建物を押しつぶし自宅に押し寄せる様子が送られていました。
2階から撮影したとみられています。
同級生が「家から出られなくない」とメッセージを送ると、翼音さんから「たぶんそうかも」と返信があったということです。
午前9時56分でした。
これを最後に連絡が取れなくなったということです。
鷹也さんも午前10時ごろ、連絡が取れなくなったと話しています。
濁流が波打つように激しく
同じころ、200メートルほど下流に住む海老田寿喜さん(79)は、流れる水の量が急激に増えたのを覚えていました。
海老田さんは妻と一緒に軽トラックで自宅近くの標高が高い場所に避難しましたが、水が急激に迫ってきたため、マフラーに水が入らないようバックで走らせたということです。
近くに住む別の住民が午前9時半ごろに撮影した映像には濁流が波打つように激しく流れているようすがわかります。
海老田さんは「濁流は盛り上がって『三角波』のようになっていて、色は黒っぽく見えたときもありました。避難をしていても恐怖で体が震えました」と話していました。
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