全部自動で作ったペロブスカイト太陽電池。25ミリ角の基板に4個作ることができ、基板が16枚あるので、全64個になる
薄くて軽く、曲げることもできる次世代型の太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」。これまで重量制限のため設置できなかった、工場の屋根や学校の体育館などに設置でき、太陽電池の利用を拡大できると期待されます。早期の実用化、耐久性の向上など高性能化が求められています。この太陽電池の自動作製システムを世界で初めて開発したと、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)が10月に発表し、報道関係者に公開しました。 ペロブスカイト太陽電池は、透明なガラス電極の上に半導体の層、光を吸収する結晶「ペロブスカイト」の層などを重ねた5層構造です。従来は、人が手作業で試作してきましたが、性能にばらつきが出るのが問題でした。自動作製システムでは、人は作業の条件を設定して、選んだ材料を機械に収めるだけ。全部自動で作ると、太陽電池の性能のばらつきが減り、作業効率も従来の10倍以上の1日に約640個作れるそうです。透明な基板に、自動でペロブスカイトの材料の黄色い液体を垂らす作業(右下)=いずれも茨城県つくば市の産総研で
この日は、ペロブスカイトの層を機械で作る様子が実演されました。透明な基板に、ペロブスカイトの材料である黄色い液体を垂らして回転させ塗り付けます。続けて、緻密で平らな層を作るのに必要な透明の液体をかけます。その後、ホットプレートで加熱して褐色のペロブスカイトの層のでき上がり。材料ごとに異なる透明で密閉された箱の中で、基板は自動で材料が塗られた後、ロボットアームなどで次の箱に運ばれます。 自動作製システムは、ペロブスカイト太陽電池の開発メーカーや材料メーカーに、効率良く試作してもらうために開発されました。ペロブスカイト太陽電池は、既存のシリコン太陽電池と比べ、水に弱いため耐久性に課題があり、発電コストも高いのが現状です。 産総研の村上拓郎・研究チーム長は「自動化によって速くできるようになり、ばらつきが減って試作品の精度が高まる。企業は耐久性がより高く、効率がより良いペロブスカイト太陽電池の開発に活用することができる」と開発したシステムの意義を語ります。 (増井のぞみ)
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