被害の爪痕が今もあちこちに…
ベニズワイガニ漁が盛んな富山県射水市の新湊漁港。
地震による液状化で15か所で道路に段差ができ、岸壁が傾きました。また、食堂や倉庫など8つの施設では床が隆起したり、ひび割れたりしました。いまも復旧作業が続いています。
ベニズワイガニをとって45年となる漁師の塩谷久雄さん(63)。
地震のあと、海底にしかけていた100個以上の「かにかご」のすべてを失いました。
被害額は500万円を超え、およそ40日間、漁に出られませんでした。
漁の再開後も不漁が続き、18日の漁でも漁獲量は例年の6、7割ほどになったということです。
塩谷久雄さん
「従業員4人の給料や燃料費もかかるので、きょうの漁獲量だと赤字になるかもしれない。初めての経験で分からないことだらけなので、カニがとれる場所を手探りで探しながら漁をしていきたい」
観光業も不漁で大変
影響は、観光業にも及んでいます。
新湊漁港で行われる「昼セリ」は観光客に人気ですが、17日の競りにかけられたベニズワイガニはおよそ760杯で、例年の4割ほどだということです。
岡山県から観光で訪れた14歳の男性は「意外と少ないと感じました。食べられる量も減るし、値段も高くなるし、大変だなと思います」と話していました。
競りに参加した漁港近くの観光施設にある飲食店の料理長は…。
飲食店の料理長
「例年より割高だと思います。一般客に加えてツアー客の分も考えると、欲しい量が確保できていない状況です」
ベニズワイガニの漁獲量は
▽昨シーズンの1月から5月までの漁獲量が107トンと平年(186トン)の58%にとどまり
▽9月から始まった今シーズンも1か月分が23トンと、平年(37トン)の62%になるなど、いずれも過去最低だということです。
シロエビの県内の漁獲量は4月に解禁されてから9月までの半年間の累計が118トンと、平年(430トン)の27%にとどまり、この時期としては過去最低になりました。
ある飲食店では、セット料理の刺身を除いて看板メニューのシロエビの刺身丼や天丼などが姿を消しました。
記録的な不漁は「海底地滑り」が影響か
富山県水産研究所は、地震によって富山湾の急な斜面で発生した「海底地滑り」が生態に影響を与えたとみています。
富山湾は標高3000メートル級の立山連峰からの水が水深1000メートルを超える深い湾に流れ込む急な地形が特徴です。
海上保安庁の調査では、この富山湾の海底の斜面が
▽南北およそ3.5キロ
▽東西およそ1キロ
▽深さが最大およそ40メートルに渡り崩れていることが確認されています。
さらに県水産研究所の調査では、海底の映像から地滑りの跡が4、5か所で確認され、海底の泥から水生生物の生息に適さない量とされる硫化物が検出された地点は地震の前より増えていたということです。
このためシロエビやベニズワイガニが海底地滑りに巻き込まれたり、地滑りで露出した古い地層から出た硫化物の影響で死ぬか移動したりしている可能性があるということです。
シロエビの資源量の今後の見通しについて県水産研究所は、子どもにあたる「幼生」の生息密度が地震前より低くなっていたことから、資源が回復するには2、3年かかる見込みだとしています。
ベニズワイガニも、漁獲対象となる大人のカニだけでなく漁獲対象ではない大人のメスや子どものカニも生息密度が減少していたことから資源の回復には9年以上かかる見通しだとしています。
富山県水産研究所 三箇真弘研究員
「過去に経験したことがない異例の事態だ。漁業者と相談しながら、生活が成り立つ範囲での資源保護を呼びかけていきたい」
不漁を「ほかの特産品」でカバー
こうした中、富山湾のエビやカニの不漁が続く中、ほかの特産品で地元を盛り上げて復興につなげようという動きも出ています。
富山県射水市と地元の観光協会などが、例年この時期に新湊漁港でとれたベニズワイガニやシロエビなどを販売するイベント。ことしは「しんみなと魚魚マルシェ」として、今月20日に開く予定です。
ただ今回は漁港の施設が液状化で被災したことから場所を別の施設に移すほか、人気のカニとエビが不漁のため鮮魚の販売は取りやめ、地元で水揚げされた魚介類を使った海鮮鍋の提供や、富山名産の「ます寿司」の作り方教室を開くことにしています。
さらに地震からの復興につなげようと、被害が大きかった富山県氷見市の名産「氷見牛」を使った料理も提供する予定です。
射水市観光まちづくり課 寺井聡志 主任
「ベニズワイガニやシロエビが販売できないのは残念ですが、ほかにもおいしい海産物などがあることを知ってほしいです」
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。