相次ぐ「シニアカー」の事故
NITEによりますと、2015年から去年・2023年までの9年間に「シニアカー」と呼ばれるハンドル型などの電動車いすの事故は、27都府県で55件確認され、25人が亡くなっています。
▽側溝や川への転落が22件、▽踏切での脱輪などが12件、▽下り坂や段差での転倒が8件などとなっています。
ことしも8月末までに把握しているだけで、福岡県、宮崎県、奈良県、愛媛県、徳島県などで転落事故などが8件起き、5人が死亡しているということです。
こうしたことから、NITEは踏切での脱輪や側溝への転落、坂道や路肩での転倒など、事故を再現した動画を公開し、注意を呼びかけています。
▽用水路や側溝の近くなど転落や脱輪のおそれがある場所では端に寄りすぎないこと、▽歩行者とすれ違う際は、急にハンドルを切るとバランスを崩すため、慌てず一度停止すること、▽クラクションを鳴らしたり、声で呼びかけたりして、できるかぎり相手に道を譲ってもらうことなどとしています。
徳島では91歳の男性が死亡
ことし7月、徳島県美馬市美馬町で、91歳の男性が自宅近くの川に「シニアカー」と呼ばれる電動車いすごと転落しているのが見つかり、亡くなりました。
警察によりますと、「シニアカー」で川沿いの道を走行中に3.3メートル下にある川に転落したとみられています。
道の幅はおよそ1.5メートルと狭く、転落した川との間には、ガードレールや柵などはありませんでした。
男性の家族によりますと、男性は「シニアカー」で田んぼや畑の様子を見に行くのが日課だったということです。
事故のあと、地元の自治会から安全対策を求める要望が上がり、美馬市は、ことし8月、道路と川の境目をわかりやすくするため、川沿いのおよそ40メートルの範囲に転落防止用のポールを設置しました。
自治会長 辺見清司さん
「亡くなった男性は、いつものように田んぼを見に行っていたのだと思います。地域ではシニアカーに乗る人も多く、この道は危ないという声があって要望しました。同じような事故が起きないでほしい」
《注意すべきポイントは?》
側溝や用水路への脱輪
NITEが事故の多いケースとして指摘しているのが側溝などへの脱輪です。
10月、大阪・住之江区にある施設で安全を確保したうえで事故を再現してもらいました。
「シニアカー」と呼ばれるハンドル型などの電動車いすの前輪と後輪が道路脇にある側溝に落ちると車体が大きく傾いて倒れてしまいました。
いったん傾くと、車体の重さで1人で起き上がることや、車体を起こすことが難しい状況になりました。
幅が広い用水路や川の近くの場合には、車体ごと用水路や川に転落してしまう危険もあります。
走行する際は道路の端に寄り過ぎないよう気をつける必要があるといいます。
坂道、カーブ、路肩~バランス崩し転倒も
ほかにも転倒しやすい場所として、坂道やカーブ、路肩があります。
坂道やカーブでは体がのけぞってバランスが崩れたりして不安定になりやすく、路肩では段差によって車体が傾くことがあるといいます。
坂道では急にハンドルを切らないこと、路肩の段差は無理に乗り越えたりしないように指摘しています。
踏切、広い道路~渡りきれないケースも
「シニアカー」は、最大で時速6キロと早足で歩くくらいの速度です。
ただ、メーカーによってスピードを調整できるものもあり、遅い速度に設定して踏切や広い幅の道路を渡りきれないケースもあるといいます。
踏切については、舗装された部分から砂利が敷きつめられた部分に脱輪することもあり、なるべく踏切を避けたルートを選んでほしいとしています。
それでも踏切を渡る必要がある場合は、脱輪や立往生しないように、1度停止して周囲を確認しながら渡りきれるかどうか考える余裕を持つことが必要だということです。
歩行者も注意を
歩行者とすれ違う際にも注意が必要です。
歩行者を避けようとして慌ててハンドルを切るとバランスを崩して転倒する危険があるため、一時停止したり、クラクションで知らせたりして、できるかぎり道を譲ってもらうよう呼びかけています。
歩行者側も道を譲る意識を持つとともに、スマートフォンを操作したり、イヤホンをしたりしていると、気付きにくくなるため、注意してほしいとしています。
NITE 製品安全広報課 清水与也さん
「利用者本人が操作に慣れることが大切ですが、家族や介助者が一緒に側溝や踏切などの気をつける場所を点検することも有効です。歩行者もすれ違う時は道を譲ることや、踏切を渡ろうとして人を見かけたら、渡りきるまで見守るなど、周囲の助け合いが大切です」
実際に乗ってみると…
「シニアカー」に実際に乗ってみて感じる注意点はどこにあるのでしょうか。
NITEの担当者の指導のもと、大谷舞風アナウンサーが乗車しました。
「シニアカー」は、最大で時速6キロと早足で歩くくらいの速度です。
乗車したメーカーのものは6段階の速度調整ができ、「前進」か「後進」かボタンで進む方向を決めてハンドルを握ると走り出します。
そして、指を離すと徐々に止まる仕組みでした。
操作は比較的簡単で、自転車と比べても安定感があると感じたといいます。
一方で、座席には高さがあり、足元の道路の状態については、意識的に確認しないと見落としてしまう可能性もあるのではないかと感じたということです。
メーカーも事故防止へ
一方で、メーカー側も対策に動いています。
障害物を感知するセンサーや、誤発進を防ぐ機能を搭載したモデルも開発しています。
助けを求めたい時のために音を鳴らすことができる「緊急コール」の機能をつけたものも出てきています。
《去年までの9年間の事故は》
事故発生55件 27都府県
▽東京都6件、▽兵庫県6件、▽広島県6件、▽京都府5件、▽埼玉県3件、▽長野県3件、▽島根県3件、▽静岡県2件、▽愛知県2件、▽岡山県2件。
▽宮城県、▽山形県、▽千葉県、▽神奈川県、▽新潟県、▽富山県、▽福井県、▽山梨県、▽滋賀県、▽大阪府、▽奈良県、▽和歌山県、▽山口県、▽徳島県、▽香川県、▽福岡県、▽大分県 各1件。
死亡事故25人 20府県
▽広島県4人、▽京都府2人、▽兵庫県2人。
▽山形県、▽埼玉県、▽神奈川県、▽新潟県、▽福井県、▽山梨県、▽長野県、▽愛知県、▽滋賀県、▽大阪府、▽和歌山県、▽島根県、▽岡山県、▽山口県、▽徳島県、▽香川県、▽福岡県 各1人。
死亡25人 年齢別
▽90歳以上が5人、▽85歳から89歳が7人、▽80歳から84歳が4人、▽75歳から79歳が4人と75歳以上が全体の8割を占めています。
続いて▽70歳から74歳が1人、▽65歳から69歳が3人、▽60歳から64歳が1人となっています。
ニュースポスト
(取材班 森優衣 佐々真梨恵 大谷舞風 金澤志江)
10月18日 おはよう日本 で放送予定
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。