島根県の旧斐川町(現出雲市)の職員として数多くの企業誘致に携わった故福間敏氏を知ってもらおうと、島根大の毎熊浩一教授(行政学)が「ギリギリ公務員 福間敏」(ハーベスト出版)を執筆した。ボサボサの髪とよれたシャツ姿に加え、出雲弁で語りかけるスタイル。官民問わず人々を魅了した「企業誘致の神様」の規格外な働き方に焦点を当てた。(共同通信=白神直弥)
福間氏に薫陶を受けた関係者が、功績を残したいと毎熊教授に依頼したのがきっかけ。経営者や元自治体職員からエピソードを聞き取り、約5年かけて完成させた。
福間氏は1951年、県東部の旧斐川町で生まれた。30代で町が企業誘致に向けて新設した課に配属されてから約20年間、産業振興に尽力。2003年には政府による「地域産業おこしに燃える人」に選ばれ、退職後は県企業立地課の参与も務めた。
村田製作所や富士通といった有名企業など約20社を呼び込み、地場産業の発展にも取り組む姿を紹介。用地取得のために朝早くから農家を数十軒回って地権者を口説き落とす様子や、通訳が必要なほどの出雲弁で企業の役員と親しくなるなど「人たらし」で魅力的なエピソードを盛り込んだ。
毎熊教授は「本書は英雄譚ではない」と強調する。島根大の講義で集まった福間氏の働き方を批判的に見る学生のリポートも紹介。「公務員の理想の姿そのものだ」と評価する声がある一方で「プライベートも仕事に費やす姿勢は現代の若者に受容されにくい」とする意見も取り上げた。
毎熊教授は「当時における福間氏なりの誠実な仕事ぶりを知ってもらいたかった」としつつも、「必ずしも福間氏の働き方をまねする必要はない。仕事に対する自分なりの向き合い方を考えてもらえれば」と期待した。
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