国のオンライン学習促進策の一環として、低所得世帯などの公立高校生向けに調達された学習用端末の活用状況を会計検査院が抽出調査したところ、約9万5600台のうち3分の1が1度も使われていないことが15日、分かった。未使用の端末台数は補助金約12億7000万円に相当し、検査院は文部科学省に有効活用の方法を検討するよう求めた。
全国の児童生徒1人につき1台の学習用端末を配る「GIGAスクール構想」の一環で、文科省は自治体に対し、タブレットなどの学習用端末のリースや購入経費を補助している。制度の要綱によると、奨学給付金の受給世帯など低所得世帯の高校生に貸与することが想定されている。
検査対象は、道府県や市町村など38自治体が21年度に補助金計約38億1300万円を使って調達した計約9万5600台。4月末までの貸与状況を調べたところ、34%にあたる約3万2800台が使われていなかった。補助金に換算すると、約12億7000万円に上る。
各自治体が調達した端末台数のうち、貸与台数が50%に満たない自治体が14あった。そのうち、8の自治体は25%未満だった。
50%未満だった14の自治体では計約3万3800台の端末が整備されていたが、そのうち2万6200台超が貸与されていなかった。補助金額で計約9億9800万円に相当する。各自治体の試算などを踏まえ、検査院は約1万3600台は今後も貸与されない見込みとしている。
貸与が低調だった自治体では、生徒が私物の端末を学校に持参できる「BYOD方式」や、学校指定の機種端末を生徒が購入する方式を採用しており、調達時の想定より貸与の希望者数が少なかった。
調達当時は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う家計の悪化や低所得世帯の増加といった可能性を踏まえ、需要予測を多めに見積もって調達台数が決定された事情もあるという。
文科省は学校現場の実情に応じ、要綱の対象とする生徒以外にも貸与できることを自治体に事務連絡で伝えている。
だが、貸与見込みのない端末の取り扱いのほか、活用促進のための具体的な方策が明確にされていないとして、検査院は文科省に対し、参考となる情報を自治体に提供するよう求めた。
文科省はGIGAスクール構想の柱として、19年度から学習用端末の配布を開始。新型コロナの感染拡大を受けてオンライン授業の需要が高まったことから整備が前倒しで進み、24年度時点で小中学校に加えて高校でもほぼ100%配備された。
端末の費用負担は小中と高校で事情が異なる。小中の端末は公費が賄うが、高校は47都道府県のうち23が公費、24はBYOD方式となっている。
文科省担当者は「詳細は検討中だが、有効的な活用方法を自治体側に通知したい」とコメントした。具体例として、教員が授業時や校務で使うことのほか、生徒の端末が故障した際の代替機とすることなどを挙げた。
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