石川県の能登地方を襲った記録的豪雨で連絡が取れなくなり、その後遺体で見つかった輪島市の中学3年喜三翼音(きそ・はのん)さん(14)の葬儀が12日、同市の正覚寺で営まれ、同級生や捜索に当たった地元消防団員ら多くの人が参列した。喪主の父鷹也さん(42)は「14歳の若さで亡くなり、これ以上の悲しみはありません」と声を詰まらせた。(岩本雅子)

喜三翼音さんの葬儀を終えて会場を出る父鷹也さん=12日、石川県輪島市で(星野大輔撮影)

 鷹也さんは「捜索していただいた人たちに感謝申し上げます」とあいさつ。「これから高校、大学、公務員になってと(翼音さんが)夢に思っていました。(輪島塗の店を営む)じいちゃん、ばあちゃんの出張朝市の手伝いもしたいと言っていました」と娘との思い出を明かした。  翼音さんは連絡が取れなくなってから9日後、自宅から170キロ離れた福井県沖で見つかった。鷹也さんは遺体に対面した際の気持ちを「(翼音さんを見つけた)漁師さんの『娘さんは頑張りました。褒めてあげてください』という言葉に涙が止まらなかった。私たちの元へ頑張って帰ってきたかったんだと思った」と吐露。「泣いてばかりいたら翼音も心配するから、家族と力を合わせて頑張っていきます」と語った。

◆カラオケや朝市…生前の様子映した動画が流された

 会場には翼音さんの制服などが飾られ、同級生らが泣きながら抱き合う姿もあった。葬儀が始まる前には、翼音さんが生前、カラオケで歌う姿や出張朝市を手伝う様子を映した動画が流された。輪島塗職人で祖父の誠志(さとし)さん(63)は「世界一優しい、友達思いの子だった。翼音は家族一人一人の胸の中に生きている。必ず生まれ変わって、私たちの前に来てくれると信じている」と言葉に力を込めた。

豪雨で亡くなった喜三翼音さんを乗せた車を見送る同級生ら=12日、石川県輪島市で(星野大輔撮影)

 参列した同じクラスの女子生徒は「葬儀に参加しなかったら引きずっちゃうかなって。翼音のことは忘れず、前に進む気持ちで来た」と気丈に振る舞った。9月の関西圏への修学旅行では長時間移動のバスで隣の席。「今も実感がない。休み時間になると翼音を探しちゃう」と目を赤くした。  中学校で初めてできた友達が翼音さんという女子生徒は「生まれ変わったら幸せになってほしい。明るくてみんなに平等で優しい友達だった」と涙を流した。  翼音さんは豪雨があった9月21日、輪島市久手川(ふてがわ)町の自宅に1人でいたところ、連絡が取れなくなった。近くを流れる塚田川の氾濫で、家ごと巻き込まれたとみられる。海上保安庁によると30日、福井県沖で漁船が遺体を見つけ、DNA型鑑定で身元が分かった。 

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