ノーベル平和賞の受賞が決まった日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の代表委員、田中熙巳さん(92)らが12日、東京都内で記者会見した。「核兵器をなくすのは人類の課題」。被爆者らの減少や高齢化がすすむなか、今回の栄誉を出発点とし、草の根の運動をさらに広げる必要性を強調した。
「今朝になったら、本当かとうれしくなった」。田中さんは会見場に現れると、満面に笑みを浮かべた。
13歳の時に長崎で被爆し、親族を亡くした。「これから若い人たちに核兵器のこと、私たちのやってきたことをきちんと伝えていく。これが核兵器をなくすための大きな力になればいい」とし、今回の受賞が平和の実現に向けた一歩になることを願った。
日本被団協は約70年にわたり、核兵器廃絶に向けた地道な運動を続けてきた。田中さんは、受賞決定の背景にはノーベル賞委員会の核情勢への強い危機感があると指摘。「核兵器をなくすのは被爆者だけの課題ではなく、人類、市民の課題だ。運動をどう強化するか議論してほしい」と訴えた。
石破茂首相が自民党総裁選の際、米国の核兵器を日本で運用する「核共有」に言及した点については、「ぜひ会って徹底的に議論し、その考え方は間違っていると説得したい」と語気を強めた。
4歳の時に長崎で被爆した代表委員、田中重光さん(83)は会見にオンラインで参加。「核戦争が起きるのではないかという中で、世界の政治家にパンチを与える意味もあったのではないか」と期待した。
今回の受賞決定を耳にすることなく鬼籍に入った先達への思いも込み上げた。「私たちの先輩が差別や偏見、健康の問題を抱えながら国の内外で体験を語ってこられたことが、雨水のようにだんだんと浸透していった。本当に先輩たちに感謝したい」
代表委員の箕牧智之さん(82)は国連の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で原爆の忘却への危機感を訴えた故谷口稜曄さんや、米国のオバマ大統領(当時)と握手を交わして核廃絶を直接語りかけた故坪井直さんの名前を挙げた。「谷口さんや坪井さんがご生存なら、もっともっと喜んだだろう」と思いを寄せた。
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