新潮ドキュメント賞を受賞した小沢慧一記者㊧=東京都港区で(平野皓士朗撮影)
小沢記者はあいさつで、元日の能登半島地震で母親を亡くした被災者は石川県の地震発生確率が低いとされていたことで、「大きな地震は南海トラフでしか起きないと刷り込まれていた」と後悔していたエピソードを紹介。「ここで地震が起きるとは思わなかった、そう言って泣く人が出ない社会になるよう今後もペンを握り続けたい」と語った。 小沢記者は、30年以内に70~80%とされる南海トラフ地震の発生率が「水増し」され、予算獲得などのために科学がゆがめられた実態を調査報道の手法で暴いた。2018~2022年に東京新聞・中日新聞で連載し、まとめた書籍を2023年8月に出版し、菊池寛賞を受賞した。 ◇ ◇ 【選考委員の選評】 ジャーナリストの池上彰さん「『いずれ起きる地震だから、確率は高く見積もっておいた方がいい』という安易な姿勢によりかからずに問題提起することはジャーナリストとして勇気ある判断でした」 数学者でお茶の水女子大名誉教授の藤原正彦さん「一科学ジャーナリストの正義感から生まれた傑作」 ジャーナリストの櫻井(さくらい)よしこさん「科学者とは言えない科学者、学者とは言えない学者の知識と良心の欠如を生々しくえぐり出した力作」 作家の梯(かけはし)久美子さん「一次資料を探し出して検証していくプロセスの臨場感に、ノンフィクションの醍醐味(だいごみ)がある」 作家の保坂正康さん「ノンフィクションの原点となるべき価値がある。取材が次第に深まっていくプロセスに、読者も納得させられる」 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。