東京・渋谷の繁華街で10月から、年間を通して夜間の路上飲酒が禁止された。区の担当者は「渋谷といえば路上では飲めないというイメージが広がるようにしたい」と意気込むが、初の週末となった4日、パトロールに同行すると、まだルールの変更を知らない人や楽しみを奪われた、と不満げな人も見られた。(浜崎陽介)

路上飲酒の禁止を呼びかけながら渋谷の中心街をパトロールする警備員たち=4日、浜崎陽介撮影

◆「ささやかな喜びまで…」不満の表情

 4日金曜日のパトロールは午後6時にスタート。15分ほど歩くと、缶入りのコークハイを飲む男性(23)がいた。マニラから観光に来たという男性に警備員が英語で路上飲酒禁止を説明すると、「OK」と返答。すんなり缶を差し出して「ルールのことは知らなかった」と話した。

路上飲酒していた外国人に注意を呼びかける警備員=東京都渋谷区で

 一方、コンビニ前で飲酒していた小売店従業員の男性(51)は回収されて不機嫌な表情。仕事終わりに1杯だけ飲んでから帰ろうと思っていたといい、「ささやかな喜びまで奪われるのか」と不満げだった。パトロールを始めて1時間で、回収した酒は10缶ほど。ただ、強制はできず回収に応じない外国人もいた。

◆「もっと街中に表示すればいいのに」

 午後8時過ぎ、缶ハイボールを片手に電話しながら歩いていた40代男性は、注意されると缶を路面に投げつけた。「今、電話している。うるさい!」。同行していた区職員らが説得すると、最後は「わかった。もうしないよ」と応じた。中米グアテマラ出身で日本に長く住んでいるといい「前は飲めたし、知らなかっただけ。もっと街中のいろんなところに表示してくれればいいのに」と話した。  渋谷駅北側で若者の多い宮下公園では、午後9時ごろから30分ほどの巡回で20缶近くを回収。夜が深まり、午後11時ごろからは駅西の渋谷署宇田川交番近くのコンビニ前で飲酒する人が目に見えて増えた。

◆パトロール経費は年間1億4000万円

 渋谷区はこれまで、10月末のハロウィーンと年末年始のカウントダウンの時期だけ、路上飲酒を禁止していた。10月1日の改正条例施行により、1年を通して午後6時から翌午前5時まで禁止となり、対象区域も渋谷駅東側などまで広がった。だが、5時間ほど同行したパトロール中に注意された人たちは、いずれも通年禁止になったことを知らないようだった。

路上飲酒していた人から酒の缶を回収する警備員=東京都渋谷区で

 区によると、この日は翌朝までに路上飲酒している309人を確認。うち日本人は195人、外国人が114人だった。5~6日にかけては328人で、日本人は110人、外国人が218人だった。罰則はないが、通年禁止となる直前の金、土曜日と比べると6割ほど減り、平日も減少傾向という。パトロールは警備会社に委託し、経費は年間約1億4000万円に上る。

◆やみくもに規制すると息苦しい?

 渋谷の路上飲みは交流サイト(SNS)でその様子が拡散され、国内外から多くの人たちが集まるようになった。城西国際大の佐滝剛弘(よしひろ)教授(64)=観光学=は「SNSで広がった動きなので、禁止になったこともSNSで周知するのは効果的」と話す。今年は隣の新宿区もハロウィーンの時期に繁華街で夜間の路上飲酒を禁止する。「渋谷はハロウィーンの聖地になり、住民生活にも支障が出ておりやむを得ないが、渋谷、新宿止まりにできればいい。日本には花見の文化もあり、やみくもに規制が広がれば息苦しくなるかもしれない」と指摘した。 

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