作業開始から1か月 デブリ取り出しのめど立たず

福島第一原発の2号機では、事故で溶け落ちた核燃料と周囲の構造物が混ざり合った核燃料デブリの試験的な取り出しに向けた作業が9月10日に始まりましたが、9月17日になって、取り出し装置の先端に付いている2台のカメラで映像が確認できなくなる不具合が発生しました。

東京電力は、3週間近くカメラの復旧を試みてきましたが、10月7日には、故障した可能性があるとして交換することを発表しました。

ただ、放射線量の高い原子炉建屋の中で安全に行えるかどうか模擬訓練で検証したうえで工程を精査するとしていて、交換を終えてデブリを取り出すめどは立っていません。

東京電力は作業の現状について、機器の調整を行っているところで、中断しているわけではないとしていますが、カメラを交換する事態については事前に想定していなかったとしています。

取り出し装置は、5年前に同じ2号機で行った核燃料デブリをつかむ調査で使われた物と同じタイプですが、今回の製造、運用を担当したのは別の企業でした。

専門家 “東京電力の取り組み方に問題”

今回のトラブルについて、日本原子力学会福島第一原子力発電所廃炉検討委員会の宮野廣委員長は、「トラブルそのものは大きなものではないが、起きる過程の、東京電力の取り組み方に問題がある」と指摘しています。

具体的には、「高い放射線下でどういう問題が出るのかは、事前に環境を模擬した装置の試験や評価をしておかなければいけなかったのではないか」とした上で、「どういう問題が起きうるかはやったことがある人たちは把握しているはずで、それを踏まえて今回どこまで装置が使えるかは、全体をマネージメントする東京電力が判断しなければいけなかった」と話しています。

また、今後、原子炉建屋の中で行うカメラの交換作業については、「カメラの配線をつなぎ替えて取り替えるとなると、きちんと始末できていないと、今度はショートするなどして信号が取れなくなるおそれが大きい」と指摘し、「交換自体を想定しなかったのだろうが、今後もっと大きなトラブルが起きないようにするため、ここで取り組みを見直してほしい」と話しています。

地元住民からは懸念の声

核燃料デブリの試験的な取り出しに向けた作業が装置の不具合により進んでいないことについて、福島第一原発が立地する福島県大熊町の住民からは、地域の復興への影響を懸念する声や、これまで以上に安全な作業を求める声などが上がっています。

大熊町の80代の男性は、ことし8月に装置の取り付けミスによって取り出しの着手が延期されたこともふまえ、「中断ばかりしていてがっかりしている。こんなにトラブルが起きると、若い世代が不安になって町への帰還を諦めてしまわないか不安だ。東京電力には責任を持って取り組んでもらいたい」と話していました。

また、70代の男性は、「こんなに中断が続くと、廃炉作業が想定よりももっと長引くのではないかと思ってしまう。東京電力では期待できないので、国が前面に出て進めるしかないのではないか」と話していました。

一方、ほかの70代の男性は、「トラブルが起きるたびに東京電力を責めたてて萎縮させてしまうのもよくないと思う。急がなくていいので、安全を第一に、着実に廃炉を進めてほしい」としていました。

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