中古車販売大手ビッグモーター(BM)の整備不正問題を受け、国土交通省が全国の自動車検査員に働き方に関するアンケートを実施したところ「上司や営業の立場が強い」など仕事の裁量や待遇に不満が寄せられた。経営者側の認識と隔たりが見られ、国交省の担当者は「命を預かる責任ある仕事だが、扱いや待遇が見合っていないのではないか」と分析する。
検査員は民間車検場で車の安全性の最終確認などを担当する。国家資格が必要でみなし公務員に当たる。BMは2023年10月〜24年2月、車検項目の一部未実施などが判明し33工場の46人に解任命令が出るなど、異例の規模の行政処分を受けた。
国交省は業界全体に関わる問題点を調べるため、BMを除く全国の民間車検場の経営者や責任者約千人と、検査員約4100人を調査した。
検査員に業務上の裁量が十分あるかとの問いに、経営者側は「そう思う」「多少そう思う」が計89%に達したが、検査員は71%だった。業務で気になる点があれば発言し、上司は意見を取り入れる風通しの良さがあるとしたのは、経営者側の86%に対し検査員は59%と大きな差があった。
回答理由の自由記述欄で経営者側は「業務では検査員の判断を優先している」「上下関係のない社内環境をつくっている」とした一方、検査員は「人員・時間が足りず正しい判断ができない」「上位者や営業の立場が強い」「現場と法律の板挟み」などと答えた。
国交省が別途実施した調査によると、検査員ら自動車整備士は労働時間が長いのに所得は低い状態が続き、改善傾向にあるが全職種平均に追い付いていない。国交省の担当者は「業界健全化には、待遇改善で人材の定着と育成を進めることが必要だ」と強調している。〔共同〕
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