福島第1原発の2号機格納容器底部に溶け落ちたデブリ採取に向け、装置にパイプを差し込む作業員ら=東京電力提供
高線量の現場には短時間しかいられないから、事前に打ち合わせを何度もする。現場に出たらとにかく時間がない。何かを考えたり、ゆっくり確認したりはできない。全面マスクを着ければ視野が狭まるし、声も聞こえにくい。誰が何をするのか、どこを通って行くのか、手順を繰り返し確認する。現場でもたもたすれば、被ばく線量が跳ね上がる。時間がない、早くやらなくてはと焦るし、緊張の中での作業になる。 それにしてもデブリ採取作業の1日の被ばく線量限度が2.5ミリシーベルトというのは、他の現場で聞かないぐらい高い。事故直後は3ミリシーベルトとか5ミリシーベルトとかあったと聞くけど。2.5ミリシーベルトの半分、1.2ミリシーベルトで現場を離れるというが、今は各社とも年間被ばく線量上限を16ミリシーベルトちょっとで管理しているから、連日作業をすれば2週間も現場にいられない。人海戦術とはいえかなり厳しい。 実物大の模型を使って訓練しても、シミュレーションをしても、本番はなかなかうまくいかない。それに高線量下では一発勝負になる。失敗したら全部現場の業者のせいにされたり、工程で急がせられたりすれば、現場の士気は下がる。 高線量のために遠隔操作で作業するにしても、ロボットで作業するにしても、必ず現場で人の手が必要になる。大きな企業は交代要員もいるけど、小さい企業は代えがきかない。作業員はコマじゃない。どんなに遠隔作業でやったとしても、作業員がいないと仕事にならないことを分かってほしい。(聞き手・片山夏子)
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