58年前の1966年に今の静岡市清水区で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審で、静岡地方裁判所は先月26日に無罪の判決を言い渡し、有罪の決め手とされてきた「5点の衣類」や袴田さんの自白調書など、合わせて3つの証拠を捜査機関がねつ造したと指摘しました。

検察は控訴するかどうか検討を進めていましたが、8日、最高検察庁の畝本直美検事総長が談話を発表し、「判決は多くの問題を含む到底承服できないものだ」とする一方、「相当な長期間にわたり、法的地位が不安定な状況に置かれてきたことにも思いを致した」として、控訴しないことを明らかにしました。

検察は9日、裁判所に対して控訴する権利を放棄する手続きを取ることにしていて、無罪が確定することにより、袴田さんは44年にわたって置かれていた「死刑囚」の立場から解放されることになります。

弁護団は、袴田さんが釈放されるまで47年7か月にわたって不当に身柄を拘束されたとして、今後、国に刑事補償を請求する方針です。

亡くなった専務夫婦の孫にあたる男性「受け入れるしかない」

無罪判決が確定することを受けて、事件で亡くなったみそ製造会社の専務夫婦の孫にあたる男性がNHKの取材に応じ「検察が控訴を断念した理由について、詳細を聞いていませんが、判断に異議はありませんし、受け入れるしかないと思っています」と心境を明かしました。

今回の判決で、捜査機関があわせて3つの証拠をねつ造したと指摘されたことについては、「ねつ造が本当にあったのかなかったのか、真相がわからず、まだもやもやする部分はあります」と述べました。

その上で、袴田巌さんに対しては「長いあいだ死刑囚という立場に置かれたあとに無罪が確定するのはかわいそうだと思います。もっと早く再審が開かれていれば、58年もかからなかったのではないかと思います」と話していました。

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