◆今も死に至る放射線を放出
デブリは、1~3号機の原子炉圧力容器に装てんされていた核燃料が、冷やされずに過熱し、溶け落ちたもの。その溶融した核燃料が炉内の制御棒などの構造物やコンクリートを巻き込み、冷えて固まった。今も、短時間浴びれば、人が死亡するような強烈な放射線を出している。1~3号機で推計880トンに上るとされる。圧力容器の底を破り、格納容器内の底部に多くが堆積しているとみられる。ただ、分布など全容は分かっていない。 微量採取は、格納容器内に装置を入れやすい2号機から始まった。本格的な取り出しは、比較的、放射線量が低いことや原子炉建屋の損傷具合から3号機から着手することを計画する。 機構は3案のうち、①と③を組み合わせの工法を優先して検討していると説明する。だが、どの工法も欠点が多く、課題を解決できないことから決定打になっていない。◆運搬・保管の具体策なく 廃炉の姿は見えず
仮に、デブリを格納容器から取り出せたとしても「廃炉」の具体的な時期や、更地にするのかなどその姿ははっきりしていない。 国や東電はこれまで、廃炉の目標時期について、事故から30~40年の2051年を掲げてきている。ただ、小野明・廃炉責任者は1月の会見で「『廃炉まで30~40年』は見積もりを積み上げたもではない。一つの目標として国が決めた。デブリ取り出しの方策が見つかったら、ある程度コメントできる」と説明した。 つまり、デブリ取り出しの具体策が決まっていない現状では、廃炉時期は見通せていないということだ。 しかも、推計880トンあるとされるデブリを取り出せても運搬先はなく、構内にとどめ置かれる恐れもある。他にも、汚染水処理に伴う放射能レベルの高い廃棄物も大量に発生しており、構内以外に保管先がない。◆福島で初の説明会 不安や疑問の声
デブリや廃棄物をどこかに移し、更地にできるかは分かっていない。構内はデブリや廃棄物の管理場所になる可能性もあり、廃炉の姿は見えていない。 3案の取り出し工法について、機構は6月、福島県の浜通り地域など13市町村で初めて説明会を開いた。いわき市の説明会では、自宅が帰還困難区域にある男性が「東電や国のホームページを見ても、どんなリスクがあるかが分からない。それの具体的な対策も書いていない」と発言した。
機構の上席技監で原子力規制委員会の前委員長の更田豊志氏は「私の考える1番悪いことは、1、2号機の使用済み核燃料プールの水が抜けること。ただ(核燃料の)温度は徐々に上がるので、1カ月は放置できる。その間に水をかければ悪いことは起きない。ただ、近づけなくなるので、水の漏れたところを止める方策はかなり難しい」と説明した。機構の池上三六・廃炉総括グループ長は「年に1、2回、このような説明会を開き、不安や懸念を聞き、廃炉計画に反映したい」と応じた。
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