東京都武蔵野市で救急医療などを担ってきた吉祥寺南病院(125床)が建物の老朽化のため、9月末で診療を休止した。同市の吉祥寺駅周辺ではこの10年で、24時間体制で患者を受け入れる二次救急医療機関が相次いで休止・閉鎖しており、地元住民から早期の診療再開を求める声が高まっている。(岡本太)

9月末で診療を休止した吉祥寺南病院=武蔵野市で

◆コロナや資材高騰で立て替えを断念した

 「吉祥寺では次々に救急病院が減って『またか』という感じ。少しでも早く再開してほしい」。9月末、吉祥寺南病院のすぐ近くに住む女性(88)は病院の建物を不安そうに見つめた。  吉祥寺南病院が診療休止を発表したのは7月。もともとは築54年と老朽化した建物の建て替えを計画していたが、新型コロナ感染拡大による経営環境の悪化と、円安などの影響による建築資材の高騰により断念。診療を引き継いでくれる医療法人も探したものの交渉がまとまらず、一時的な診療休止を決断したという。  同市の吉祥寺駅周辺では松井外科病院(91床)が2014年に救急と入院機能を停止。24年には森本病院(74床)が建物の老朽化などにより閉院し、吉祥寺南病院が唯一残された二次救急医療機関だった。病院では近隣区市の患者も含めて年約1900件の救急搬送を24時間体制で受け入れ、災害時に中等症の患者などを治療する「災害拠点連携病院」にも指定されていた。

◆継承に向けた交渉を武蔵野市も注視

 吉祥寺南病院の診療休止に伴い、駅周辺からは、車で約10分の武蔵野陽和会病院などが最寄りの二次救急医療機関となる。市は、吉祥寺南病院を運営する医療法人啓仁会に対し、診療再開に向けた調整などを要請。啓仁会は「病院の継承を目指し、複数の医療法人と交渉を進めている」と説明している。  市の担当者は「救急や災害対応の面からも地域にとって大切な病院。早期の診療再開に向け、継承先が決まれば、市としてどういう支援ができるか検討していきたい」としている。 

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