顧客が従業員らに理不尽な要求をするカスタマーハラスメント(カスハラ)を防止する東京都の条例が4日、都議会本会議で可決、成立した。カスハラを禁止する全国初の条例で、来年4月に施行する。罰則はない。都は年内にカスハラの具体例や対策を盛りこんだ指針を示す。条例施行までに、各業界ごとに定める防止手引きのひな型も作る。

4日午後1時に始まった都議会本会議

◆「何人も行ってはならない」明記

 条例ではカスハラを「顧客らから就業者に対し、その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するもの」と定義。「何人も、あらゆる場において、カスハラを行ってはならない」と明記した。  顧客からの暴行や暴言、不当な要求などのカスハラを巡っては、住宅メーカーの社員が客から度重なる叱責(しっせき)などを受けた後に自殺し、労災認定されるなど社会問題に。国も従業員保護を企業に義務付ける法改正を検討している。

◆対象は都内で働く人や客、企業、公的機関

 都の条例は、都内で働く人や顧客、民間企業、公的機関などが対象。住民や議員、ボランティア、イベント参加者も含まれる。カスハラ防止に向けた責務を、働く人、顧客、事業者、都ごとに定めた。事業者はカスハラを受けた従業員の安全を確保し、顧客にやめるよう申し入れるなど適切な対応に努める。都は事業者への情報提供、相談や助言などを実施する。  一方、顧客が正当な主張をためらわないように「顧客らの権利を不当に侵害しないように留意しなければならない」とも定めた。  罰則のない理念条例のため、都議会ではカスハラの抑止効果や事実確認に役立つとして、録音や録画機器の整備支援を都に求める意見が上がった。条例の制定は連合東京などが都に求め、都は昨年秋から有識者らと検討を重ねてきた。(押川恵理子)

◆連合東京の会長「働く環境が良くなる」

 連合東京の斉藤千秋会長は「条例によって相手を不快な思いにさせないことが広まり、働く環境が良くなるだろう。都が国に先んじたことで、他県も追随すると思う」と述べた。(原田遼) 

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