インド在住の小牧詩葉さん(12)が、同国の古典舞踊「バラタナティヤム」を習い始めて約1年9カ月という異例の早さで、一人前のダンサーとしてプロデビューを果たした。「免許皆伝」となるまで通常は10年程度かかるとされるが、小牧さんは厳しい特訓を苦にせず、師匠が太鼓判を押した。日本公演も視野に入れ「バラタナティヤムの良さを世界の皆さんに知ってもらいたい」と意気込んでいる。(共同通信=高司翔一郎)
3月10日、小牧さんは鮮やかな民族衣装を身にまとい、首都ニューデリーの舞台でお披露目公演に臨んだ。両親や、同級生や保護者ら、日本人中心の約200人の観客を前に、約1時間半にわたり堂々と舞った。
身長160センチと同級生の女子の中でも背は高い方。長い手足を生かしながら音楽に合わせ、足首につけた鈴でリズムを取りながら、華麗にステップを踏んだ。
小牧さんは神奈川県出身。父のインド赴任に伴い、2019年からニューデリー近郊で暮らす。インドの四大古典舞踊の一つで南部発祥のバラタナティヤムを知ったのは2022年。ニューデリー日本人学校で体験授業の機会があり、美しい衣装やアクセサリー、化粧に魅了された。
演目は長いもので1曲30分にも及ぶ。基本姿勢の一つに中腰があり、運動量は非常に多い。覚える振り付けもたくさんあるが「踊っているといつの間にか時間がたってしまう」。つらいと感じたことは一度もない。
師事したのはインドで勲章を授与された実績を持つ女性ダンサー、故バイディヤナタンさん。2023年9月に86歳で死去し、デビューを見届けてもらうことはできなかったが、小牧さんの努力と才能を誰よりも認めていた。
遺族によるとバイディヤナタンさんが指導に熱心に取り組んだのは、女性の活躍を後押ししたいとの思いからだった。「教え子が将来どんな道に進んでも、ダンスの経験は必ず力を与えてくれる」と話していたという。
「ネガティブな性格だった」という小牧さん。だが「バラタナティヤムを始めて自信がついた。もっと練習してうまくなりたい」と目を輝かせる。
インドの古典舞踊の世界は競争が厳しく、プロとして公演で生計を立てるのは容易ではない。まず必要なのはとにかく多くの経験を積むこと。デビュー後間もなく、無償だが、いくつかのイベントで踊ることができた。4月からは中学生。学業とダンスの両立に、より一層取り組む覚悟だ。
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