全国各地で自然の長期的な変化を調べる環境省の調査で、里山や里地にいる鳥やチョウなど身近な生物の個体数が急速に減っていることが分かった。1年間で個体数が22%減少した種もあり、絶滅危惧種に相当する水準。希少種ではなく、スズメやオナガのようにどこにでもいる「普通種」の減少が深刻だった。

同省と日本自然保護協会が3日までに、発表した。

スズメ=共同

北海道から沖縄まで全国325カ所で2008〜22年度に里地や里山の植物や鳥類、チョウ類の個体数などを決まった手法で調べた。出現頻度が高いチョウ103種の年間の減少率を調べると、ギフチョウや日本の国チョウ、オオムラサキなど33%に当たる34種が3.7〜22%で、環境省が絶滅危惧種と認定する際に基準とする減少率3.5%以上だった。

オナガ=共同

かつては群れで多数が飛ぶ姿が見られたイチモンジセセリ(減少率6.9%)などの普通種の減少が特に顕著。鳥類も106種中、15%の16種で数の減少が激しく、スズメ(同3.6%)やオナガ(同14.1%)など普通種の減少が目立った。

生息環境別に見ると、森林や山地ではなく、農地や草原、湿地など開けた環境に生息する種の減少が激しい。これらの場所では里山の荒廃やシカの食害などに加え、稲の害虫駆除に使われるネオニコチノイド系農薬の影響が特に大きいためだと考えられている。

分布域が広がっていることが分かった南方系のチョウ、ツマグロヒョウモン=共同

調査は、環境省が民間に委託して03年度から行っている「モニタリングサイト1000」と呼ばれる調査の一環。同調査ではこのほか、サンゴの白化や海草、海藻の減少など地球温暖化の影響とみられる変化も多く確認された。またツマグロヒョウモンなど南方系のチョウの分布が広がる傾向も見られた。〔共同〕

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