NHKニュース7 約80年続く 輪島塗の箸工房
輪島市河井町の小山雅樹さんは、78年続く「輪島塗」の箸工房の2代目として、漆塗りの箸を作り続けてきました。
ことし1月の能登半島地震では自宅を兼ねた工房が半壊し、壊れた機械の修理をして3月に製作を再開しました。
しかし、今回の大雨で倉庫が浸水し、箸の材料となる「木地」などが水につかる被害に遭いました。
材料の木はとても細く、少しでも水にぬれると曲がったり、折れたりしてしまうため、廃棄することになるということです。
今回、およそ2万膳分を廃棄し、被害額は300万円から400万円にのぼるということです。
小山さんは3日前から被害を免れた材料を使って製作を再開しましたが、浸水被害にあった親族の家の片づけも手伝わなければならず、思うように作業は進まないといいます。
輪島市鳳至町にある小山さんの義理の父の自宅は、床上まで水につかる被害に遭いました。
義理の父は90歳と高齢なため、小山さんは被災した2日後から毎日のように家財道具の運び出しや床の乾燥作業など、片づけを手伝っています。
こうしたこともあって「輪島塗」の箸の製作はほとんどできず、10日以上たった今も被災した倉庫の片づけは終わっていません。
今回運び出したものの中には、水につかってしまったアルバムなどがあり、小山さんは損傷した家族写真を手にして無念の思いを語っていました。
小山さんは「思い出の品はお金を出しても買えません。地震では無事だったものが今度の大雨でだめになってしまい、悲しいです。晴れている間に少しでも早く片づけようと、義父の自宅の片づけを優先しているので、箸の製作に専念できるのはまだ先になりそうです」と話していました。
2日は雨で家の片づけができず時間ができたため、もっとも重要な工程のひとつで、1日がかりで行う「はけ塗り」という箸に漆を塗る作業に入りました。
小山さんは9月の大雨以来、久しぶりに扱うはけや漆の感触を確かめながら、1本1本ていねいに塗り上げていました。
小山さんは「地震のあと、やっとの思いで工房を再開させましたが、今度は水害の被害に遭い、心も一度は萎えてしまいました。きょうは久しぶりに漆を五感で感じながら作業ができてうれしかったです。78年続いてきた工房でこれからも箸を作り続けていきたい」と話していました。
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