地震と豪雨に見舞われた能登半島の書家で願正(がんしょう)寺前住職の三藤観映(みつふじかんえい)さん(77)=石川県七尾市=は脳卒中での右手まひと、たび重なる災害を乗り越え、東日本大震災などの被災地復興を願ってつくられている日本酒「絆舞(きずなまい)」のラベルに揮毫(きごう)する。地震で本堂や鐘楼堂が崩れ落ちても「負けとられん。あきらめん姿勢を身をもって示す」と、不屈の精神を字に込める。

◆左手で稽古、執念のリハビリで右手も動き「両利きの書家」に

「絆舞」の文字をけいこする三藤観映さん。右手で筆を握る=石川県七尾市で

 三藤さんは東大寺仁王尊像修復で記念胎内経を書き、テレビ番組に書道講師として出演したこともある。2022年6月に脳卒中で倒れ、右半身不随に。4カ月の入院中、左手で稽古した。「執念でやった」というリハビリで右手が動くようになり「両利きの書家」となった。  揮毫するのは東日本大震災からの復興を願い、福島県の酒蔵が醸造する「絆舞」。全国の心を一つにしようと信用金庫のネットワークが取り組むプロジェクトで、47都道府県の米をブレンドする。試練を乗り越える強さを発信する三藤さんに、揮毫の打診があった。

日本の心を一つにする「絆舞」。能登に思い寄せる限定ラベルが販売される=曙酒造提供

◆「能登のみなさんに希望を」

 寺は創建360年超。築160年余の本堂は地震で壊れて解体。再建の道筋は見えない。三藤さんは3カ月の避難生活を余儀なくされ、心労が重なる。「書家としてこの病気は残酷で絶望したが、はい上がった。地震も乗り越えられると信じる。能登の皆さんに希望を持ってもらうため、この右手で書く」(前口憲幸)

 絆舞 東日本大震災などの被災地支援のため、全国の米を使い、福島県の曙酒造が年間最大1万リットルを醸造する日本酒。人々の「絆」と、踊るようなおいしさを表現する「舞」と米(まい)をかけて名付け、城南信用金庫(東京)が事務局となり、2017年にプロジェクトを始めた。23年は全国308地域の米をブレンド。能登半島地震で被災した石川県珠洲市のコシヒカリ、穴水町の能登ひかりなどを使った。三藤観映さん揮毫(きごう)のラベルは限定3千本を予定。税抜き2200円から。1本当たり100円を被災地に寄付する。



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