健康保険証の廃止が、どのような議論を経て決まったのか。国民に大きな影響を与える政策決定の経緯を政府は記録に残していない。 マイナ保険証への一本化を押し進めてきた河野太郎デジタル相は27日の閣議後会見で、記者から国民への説明責任を問われると、「これからも丁寧で分かりやすい説明に努める」と従来の発言を繰り返し、正面から答えることはなかった。

27日の会見で質問に答える河野太郎デジタル相(デジタル庁の会見動画のスクリーンショット)

河野氏は2022年10月、「24年度秋に現行の保険証の廃止を目指す」と表明。現行保険証の選択の余地も残すとしていた政府の閣議決定を覆し、「完全廃止」へと転換させた。 廃止決定の経緯が分かる記録を政府が残していなかったことは、東京新聞の情報公開請求や関係者への取材で判明した。

◆河野氏も「大臣間で協議」でも記録なし

この日の会見で河野氏は、保険証廃止の方針について「大臣間で適宜、意見交換はしていた」と説明した。しかし、大臣間の協議の事実を裏付ける記録は「ありません」と断言した。 東京新聞の開示請求に対し、デジタル庁は決定経緯が分かる記録として、表明前に開かれた関係省庁の会議の議事概要を開示した。この議事概要には、河野氏の発言しか記されておらず、他の関係省庁からの意見は「なし」だった。 開示文書からは、いつ、どのような議論を経て、誰が決めたのかが分からない。

関係府省庁からの意見の欄に「なし」とだけ書かれた関係省庁連絡会議の議事概要

会見で、河野氏に改めて決定経緯を尋ねたが、「関係省庁の意見については、議事概要の通り」などと答えるにとどまった。

◆もはやお決まりの「丁寧で分かりやすい説明に努める」

保険証廃止は、国民全体に大きな影響を与える重大な政策決定ですが、国民への説明責任を果たしていると考えていますか―。 記者からの問いに、河野氏は説明責任の有無については言及することはなかった。 代わりに返ってきた答えは、これまでも会見で幾度となく語ってきた次のような決まり文句だった。 「これからもさまざまな広報手段を用いて国民に対して丁寧で分かりやすい説明に努めていきたい」(マイナ保険証取材班) 

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