埼玉県宮代町で昨年11月、20代の男性が乗る自転車が歩いていた50代の女性に衝突し、女性が足の骨を折る重傷を負った。男性は県が条例で義務付けている自転車保険などに未加入で、女性の医療費と慰謝料の賠償額は200万円を超える見通し。女性は取材に「自転車も車のように安全運転し、保険に入ってほしい」と警鐘を鳴らす。男性は今年1月に重過失傷害罪で略式起訴され、5月に罰金40万円を納付した。(菅原洋)

◆町道の交差点 一時停止せず

 事故発生状況報告書と事故証明書などによると、昨年11月18日午前9時40分ごろ、当時学生だった男性は同町国納で一時停止義務のある町道交差点を停止せずに左折し、路側帯の方に侵入して歩行中の女性と衝突。前方の車輪付近が女性の右足に強く当たり、女性は転倒した。

自転車の側から見た事故現場付近。歩行者と衝突したのは左側に3本立つ赤いポールの内側=埼玉県宮代町で

 男性は女性を気遣う言葉をかけたが、お互いに連絡先を交換して現場から離れた。道交法は自転車事故でも直後に警察への報告を義務付けているが、男性は報告しなかったという。  女性は痛みに耐えられず、その日のうちに病院へ行き、右足の膝の陥没骨折と診断された。杉戸署にも行き、被害を相談した。

◆手術、1カ月半の入院…後遺症の可能性も

 女性は同12月に手術を受けた後、1カ月半入院。退院後は約3カ月通院し、10月には再度の手術を控える。今も痛みが残り、医者は「後遺症が残る可能性がある」との見方を示しているという。  女性がこれまで男性に請求した医療費は、健康保険の3割負担が適用された後で約50万円。ただ、事故は男性の責任のため、健康保険組合は医療費の残額100万円以上を男性に請求する見込み。女性は別途、再手術の医療費を男性に求める予定で、慰謝料も数十万円以上とみられる。  男性は取材に事故関係書類などの状況を認めた上で「事故直後に警察へ報告しなかった。自転車保険に入っておけば良かった。示談金は払いたい」と語った。

◆自転車保険 条例で義務化、でも罰則は

 自転車保険などの加入を義務化する関連条例は、県内では2018年に施行された。県が今年7月に県内在住者を中心に約2500人から回収したインターネット調査では、自転車に乗る人のうち自転車保険などに「加入していない」と答えた人の割合は約14%だった。ただ、義務化の条例に罰則は設けられていない。  自転車と歩行者の事故を巡っては、歩行者が死亡や重体などの場合、裁判所で数千万円の損害賠償命令が出たケースもある。  県警の資料によると、昨年1年間に発生した自転車が関係する人身事故の件数は4848件(前年比101件増)で、このうち死亡事故は23件(同7件増)と増加傾向にある。自転車事故は厳罰化が進み、26年までに施行される改正道路交通法で一時不停止などが反則金の対象となる。 

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