広島県大竹市では、駅前や商店街、公園など街中の至る所でストーンアートを目にすることができる。
パンダやこいのぼり、げんこつも…。1メートルを超えるものから30センチ程度まで、大きさも題材もさまざまだ。
設置は約20年前に始まり、現在は150基以上が置かれている。背景には、明るい街を目指した「暴力追放」の願いがあるという。(共同通信=斉藤祥乃)
きっかけは広島県立大竹高の文化祭。2003年当時、すさんで活気のなかった生徒と、あいさつを通じた交流に取り組んでいた地元の暴力監視追放協議会の初代会長が、美術部が展示していたストーンアートに感銘を受けた。
「もっと大きな石に描いて街や公園にいっぱい置いてある夢を見た」。
その言葉に地域住民や学校、生徒が協力し、石を集め絵を描いた。約1年後の2004年12月11日、JR大竹駅前の緑地公園で16基の除幕式が開かれた。
公園前に置かれた親子のパンダや、作家の手で細部まで描き込まれたこいのぼり、「石に意志を持たせた」というげんこつなど、その後も作品は増えていった。
使う石の中には約10トンと文字通りの巨石もある。重機を使った運搬には操縦者や道路使用の事前確認が欠かせない。石の提供から運搬、描画までの全てが、近隣企業や住民のボランティアで成り立っている。
「ストーンアートの制作をきっかけに、地元の公民館に足を運ぶようになった」と話すのは、大竹市立玖波中美術部の3年笠井美来さん(14)。2年前、1メートルほどの平たい石を黄色いカエルに見立てた作品の制作を行った。
12月の屋外で、運ばれてきた石の洗浄から作業は始まった。チョークで書いた下書きは雨や雪で消え、迫る締め切りに焦る中、冷たい水で筆を洗う手はかじかみ、心が折れそうにもなった。
しかし、一緒に作業をした地元企業や住民とのつながりができたという。その後も、色あせた他の作品の修復や総合学習の授業などを通して、交流が続いている。
協議会現会長の北林隆さん(67)は「制作だけでなく、すでに設置されている作品のメンテナンスなどを通して、世代を超えた交流や地域への愛着が生まれたら」と期待を寄せた。
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