作家三島由紀夫を写した写真集「薔薇刑(ばらけい)」など独自の美意識に裏打ちされた作品を手がけた写真家で文化功労者の細江英公(ほそえ・えいこう、本名敏広=としひろ)さんが16日、左副腎の腫瘍のため死去した。91歳。山形県出身。葬儀・告別式は家族で行った。喪主は長男賢治(けんじ)さん。 東京写真短大(現東京工芸大)に進んだ1952年、デモクラート美術家協会に参加。中心人物で前衛美術家の瑛九から強い影響を受けた。59年には東松照明さん、奈良原一高さんらと写真家集団「VIVO」を結成し、リアリズム写真や報道写真とは異なる新たな写真表現を追求した。 人気作家だった三島を被写体に耽美(たんび)的な世界を表現した「薔薇刑」(63年)で日本写真批評家協会作家賞。秋田の農村で舞踏家土方巽のパフォーマンスを写した「鎌鼬(かまいたち)」(69年)が芸術選奨文部大臣賞を受けるなど、60年代以降、演劇的とも言える物語性の強い作品群で注目を集めた。 東京工芸大教授や、山梨県の清里フォトアートミュージアム館長として、後進の指導や写真文化の普及に貢献。米ルーシー賞など海外でも高く評価された。 ほかの作品に「おとこと女」「ガウディの宇宙」「胡蝶(こちょう)の夢」「死の灰」など。日本写真協会年度賞。2010年文化功労者、17年旭日重光章。
作家三島由紀夫を写した細江英公さんの「薔薇刑 #32」=1961年©Eikoh Hosoe
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