多くの河川氾濫をもたらした石川県能登地方の記録的豪雨で、21日は16河川、22日には新たに7河川で氾濫した。専門家は能登半島地震で被災した護岸や堤防の機能低下、海底隆起などの地形変化が河川の流下能力に影響した可能性を指摘する。(田嶋豊、岩本雅子)  県によると、地震後、被災した護岸や堤防などの応急復旧工事は5月までに完了。梅雨の出水期に異常はなかった。定点カメラなどの状況から今回の氾濫は降雨による越水が原因とみるが、堤防損傷の有無を含め詳細調査はこれからという。能登地方は平野部が少ない上、小さい川が多い。流域に降った雨が短時間に集まるため、洪水が発生するまでの時間が大きな河川に比べて短く、今回のような大雨では一気に水かさが増したとみられる。

河川が氾濫した輪島市内。右奥は輪島市役所=22日午前、石川県輪島市河井町で(ドローンから撮影)

◆震災の影響「護岸や堤防の水害への備えが弱まった可能性」

 気象庁によると、輪島で22日午前8時10分までの24時間で412ミリ、珠洲では午前8時50分までで315ミリの降水量を観測。今回氾濫した輪島市街地を流れる河原田川は、50~100年に一度の降雨を想定した計画規模が「24時間総雨量213ミリ」、珠洲市役所近くを流れる若山川は「同223ミリ」で、降水量が上回ったが、千年以上に一度の降雨を想定する想定最大規模の727ミリ、787ミリには及ばなかった。また、氾濫した若山川の珠洲市若山町宇都山地点は、想定最大規模「同813ミリ」の半分以下の降雨だったにもかかわらず川があふれた。

河川の氾濫で土砂が押し寄せた輪島市内=22日、石川県輪島市河井町で(ドローンから撮影)

 金沢大の谷口健司教授(河川工学)は「地震で護岸や堤防などが被災して洪水災害への備えが弱まり、観測史上最大規模の雨量で、地震前であれば生じなかった被害が発生した可能性はある」と指摘。沿岸部分での地盤隆起についても「大きな地形変化で河川の流下能力に変化が生じている可能性もあり、精査した上で洪水対策の見直しが必要かもしれない」と述べた。  県河川課の担当者は取材に「今回の氾濫を十分検証し、今後の対策につなげたい」と述べた。 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。