石川県能登町では、60代女性が自宅近くの川に流されたとみられるが、道路が寸断され、今も本格捜索ができていない。女性の娘婿で同町内に住む男性が22日、北陸中日新聞の取材に「捜しに行きたいけど、近づけん」と吐露。義父と男性の妻、高校3年生の息子も避難先で取り残されているといい、「安全な場所に移動させたいが、待つしかない」とやるせなさをにじませた。(奥川瑞己、猿渡健留)

孤立した家族の元に行くのを断念して、土砂の山を後にする男性=石川県能登町北河内で

◆大雨による土砂崩れで通行止めに

 男性によると女性は21日午前、川の近くに止めていた車の様子を見に出掛けて連絡が取れなくなった。男性は現場に続く県道のトンネル前まで来たが、大雨による土砂崩れで通行止めに。他の道も試したが近づけなかったという。  同町東部にある男性宅は、元日の能登半島地震で津波に遭って全壊。その後仮設住宅に移ったが、狭いため「(息子の)勉強の場所を確保しよう」と、妻や息子は車で約40分の町北部にある女性宅によく訪れていたという。21日もそうだったため、妻と息子、義父の3人は住民約10人と一緒に高台の寺に避難。電気も水道も止まっていて、携帯電話で通話はできるが、充電が減ってきている。

◆高々と積もった土砂の山、鳴り響く濁流の音

 男性は22日昼、トンネルから徒歩で約4キロ先の家族の元に向かおうとした。約800メートルのトンネルは真っ暗で石ころが転がり、濁流の音が鳴り響く。ヘッドライトを灯(とも)して通り抜けた先に広がっていたのは、高々と積もった土砂の山。上ろうとしても雨のせいか足が深くはまってしまう。茶色く濁ったダムが見えたが、どこまでが道路かダムか分からず、進むのを諦めた。  元日の地震に続く災難に「神も仏もねえな」とこぼしつつ、こうも願った。「ヘリコプターでも良いから助けてあげてほしい」

輪島市町野町で土砂が押し寄せた道を歩く女性は「長く生きているけど、地震と大雨両方経験するとは思わなかった」と泥まみれの町を眺めた




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