◆飛行ルートは「権利義務を制限する行政処分に当たらず」
判決理由で岡田裁判長は、航空機は騒音や安全性について一定の基準を満たすことが航空法で求められていると指摘。飛行ルートは「住民に騒音被害の受忍を義務付けたり、墜落・落下物の被害による生命、身体への危険を負わせたりすると認められない」とし、訴訟で争える国民の権利義務を制限する行政処分には当たらないと判断した。東京地方裁判所がある裁判所合同庁舎=東京都千代田区で(資料写真)
住民らに訴訟を起こす資格(原告適格)があるかについては「経路上の障害物に航空機が衝突して墜落、破損する可能性が高いなど特段の事情はない」として認めなかった。 判決文によると、新ルートは2020年3月から南風の日の午後3~7時のうち3時間ほど運用されている。着陸しようとする航空機が都心上空を低い高度で飛び、離陸時は川崎市の石油コンビナート上空を低空で飛ぶ。 ◇ ◇ ◇◆原告「こんな不条理な政策はない」と国を批判
「街頭で裁判の話をすると、熱い激励を受ける。涙ながらに『止めてほしい』という人もいる。判決は残念だが、最初から二審まで闘うつもりだった」。敗訴にもかかわらず原告の須永知男さん(77)=渋谷区=は判決後の記者会見で、力強く語った。判決後の記者会見に臨む須永知男さん(左)と鳥海準弁護士(中)=20日、東京・霞が関の司法記者クラブで
裁判では、都心の騒音被害に加え、川崎市のコンビナート上空を飛ぶことの危険性を指摘してきた。この日も「世界中でコンビナートの上を飛ばしている国はない。落下物により、いったん火が付けば、止められない」と危惧し、新ルートの運用は南風の日のため「燃えかすは全部東京にくる」と強調した。 国が新ルートの運用を決めたのは羽田空港の発着枠の拡大が狙い。しかし、須永さんは、従来のルートで発着枠を増やせるとし「膨大なリスクを負い、飛ばす必要のないルートを飛ばす。こんな不条理な政策はない」と憤った。 新ルート運用開始2カ月後の2020年6月の提訴で始まった今回の訴訟は、新ルート設定が行政処分かどうかや、原告適格の有無という入り口で退けられ、実質的な審理に入らないまま一審が終わった。代理人の鳥海準弁護士は「判決は不満。だから二審。中身をやったら絶対勝てる」と強調した。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。