同居している同性カップルの住民票の続き柄は、通常「同居人」などと記載されますが、ことし5月に、長崎県大村市が男性どうしのカップルに「夫(未届)」と記載した住民票を交付したことが明らかになり、同性どうしの結婚が認められていない中、異例の対応と注目されました。

これを受けて、同様の対応をするか検討を続けてきた世田谷区の保坂展人区長は18日の区議会で、「希望する住民の身近な窓口で、申し出や交付が円滑にできるよう、関係部署に指示しており、11月の段階で、取り扱いを開始できるよう準備を進めている」と述べ、11月中に、希望するカップルへの交付を始める方針を明らかにしました。

また、世田谷区の方針表明を受けて、中野区も同じ時期に、交付を始めたいとしていて、こうした対応は23区で初めてだということです。

「夫(未届)」や「妻(未届)」といった続き柄は健康保険の扶養家族となるなど社会保障制度で法律上の夫婦と同じ取り扱いを受ける、事実婚の夫婦に適用されているもので、今回の対応で、表記は同じになりますが、同じ取り扱いを受けることはできません。

ただ、当事者からは「家族としてのつながりを感じられる」などと評価する声が上がっていて、関東地方では、栃木県鹿沼市や神奈川県横須賀市などがすでに同様の対応を始めたほか、東京 杉並区も検討を進めています。

同性カップルからは歓迎の声

同性カップルからは、歓迎する声が上がっています。

世田谷区の古谷光枝さん(48)は、15年ほど前から、同性のパートナーと暮らしていますが、当初は、「同居人」と住民票に記載されることに違和感を持ち、別々の世帯として届け出ていました。

おととし、世田谷区で希望があれば「縁故者」と記載できるようになったことを受けて、初めて世帯を1つにしたということです。

古谷さんは「友人でもなく、家族だと思っていたので、『同居人』というのは他人のように感じて、嫌でした。『縁故者』も遠い親戚という感じがしますが、少しは近づいたと感じたので変更しました」と話していました。

今回の方針については「素直にうれしく思いました。『妻(未届)』と変更できるようになったら、もちろんしたいです。さらにつながりを感じると思いますし、住民票上だけでも『妻(未届)』の記入ができるのはうれしいです」と受け止めていました。

一方で、「法的な保障は何もないままなので、これで何か変わることはあまりないと思います。一つずつ一つずつ、男女には必要のない行程を踏みながら進んで行っていますが、いつか、生きている間には、未届という部分がなくなることを望みます」として、同性婚が認められるようになってほしいと話していました。

同性カップルめぐる現状は

市区町村が交付する住民票には、世帯主との関係を示す、続き柄の欄があり、法律上の婚姻関係がある夫婦の場合には「夫」や「妻」、事実婚の場合には、「夫(未届)」や「妻(未届)」と記載されます。

一方、総務省などによりますと、同性カップルの場合は通常は「同居人」と記載され、一部の自治体では「縁故者」という記載を認めているケースもあるということです。

今回の対応で、続き柄については、事実婚と同じ表記になりますが、事実婚では、健康保険の扶養家族になるなど、社会保障制度で、法律上の夫婦と同じ取り扱いを受けられる一方、同性カップルは同じ扱いを受けることはできません。

こうしたことから、総務省は「社会保障の窓口などで住民票だけで適用の可否を判断できなくなり実務上の問題が生じるおそれがある」としていますが、世田谷区は、事務手続きで問題が起きないよう丁寧に対応していくとしています。

同性カップルをめぐっては、「パートナーシップ制度」を導入している自治体が増えていて“結婚に相当する関係”だとして、証明書を交付し、夫婦と同じように一部の行政サービスを受けられるようにしています。

また、民間企業でも同性パートナーを社内の福利厚生制度の対象にしたり、賃貸契約や保険契約などで、家族と同じように対応したりする動きがあります。

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