規制制度の変更を議論した原子力規制委員会の会合を終え、退席する石渡明委員=2023年2月13日、東京都港区で(佐藤哲紀撮影)

原子力規制委員会の石渡(いしわたり)明委員が18日、任期満了で退任した。石渡氏は、岸田政権が進めた原発の60年超運転を可能にする法改正に伴う規制制度の変更に際し、規制委の会合で「安全側への改変とはいえない」などとして最後まで反対。日本原子力発電敦賀原発2号機の審査では、原子炉直下の活断層の存在を否定できないとして「再稼働不可」の結論を導いた。

◆「40年ルールを外すことに納得できなかった」

原子力規制庁(規制委事務局)で開かれた退任の記者会見で、「60年超」に反対した時の思いを問われた石渡氏は「原子力基本法、炉規法(原子炉等規制法)といった法律を守ることが使命だと思って(規制委員に)就任した。炉規法の柱だと思っていた『40年ルール』を外してしまうことに納得できなかったのは事実だ」と振り返り、60年を超えて運転される原発の安全性への懸念に関しては「これから後にやっていただく委員がきちんとした審査をして、判断していただけるものと期待している」と話した。

原発の60年超運転 2023年5月に成立した束ね法「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」で、「原則40年、最長60年」だった原発の運転期限から規制委の審査で止まっていた期間が除外され、60年を超える運転に道が開かれた。石渡氏は、法改正に向けた規制制度の変更を巡る規制委の議論で、審査を厳しくして停止期間が長引けば長引くほど老朽化した原子炉を運転することになると指摘し、「科学的、技術的な新知見に基づくものではない。安全側への改変とはいえない」と批判。新たな規制制度は、5人の委員のうち4人の多数決で決定された。

石渡氏は金沢大理学部教授、東北大大学院理学研究科教授や日本地質学会長を経て、2014年9月に原子力規制委員(地震・津波担当)に就任。2期10年務めた。石渡氏の後任には、2024年9月19日付で山岡耕春(こうしゅん)名古屋大名誉教授が就く。(宮尾幹成)


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