東京電力福島第1原発事故に伴い2号機で溶け落ちた核燃料(デブリ)の微量を採取する計画で、東京電力は17日、採取装置に搭載するカメラ2台の映像が遠隔操作室に届かなくなったと発表した。映像がないと採取できないため、作業を中断した。再開の見通しは立っていない。計画を巡っては、ミスで着手が遅れるなどトラブルが続いている。(山下葉月、荒井六貴)

◆映像がないことには…

 東電の広報担当者は「採取装置のオンやオフをしたり、ケーブルなどの接続状況を確認したりしている。原因を調べる」と説明。18日にも復旧すれば、採取を再開したいとしている。

デブリ取り出しに使用される装置=神戸市の三菱重工業神戸造船所本工場で

 東電によると、映像が届かなくなったカメラは、採取のための釣りざお式装置に搭載する4台のうち先端の2台。2台のうち1台は、デブリをつかみ取るためのはさみのような器具を映し、もう1台は、釣りざおに当たるアームの先端につけられており格納容器内を映す。映像がないと、デブリを採取できたかどうかを確認できない。

◆15日の段階では映像が届いていた

 この日午前6時ごろから作業を始め、装置の動作確認などをしていたところ、2台から遠隔操作室に映像が届いていないことが判明した。15日は映っていたという。仮に作業がスムーズだった場合、小石状のデブリをつかみ取る作業に入っていた可能性もあった。  カメラは、放射線やデブリへの注水による湿気にも強い設計になっていた。  作業は10日に着手。14日までに、作業員がパイプ5本を接続していき、装置のアームを格納容器内に入れ、アームの先端部分は容器内で最長の約4.4メートルまで伸ばした。そこから釣り糸に当たる棒を垂らして、はさみのような器具をデブリに接触させるまでの作業を終えていた。

◆着手段階からトラブル続き

 採取計画を巡っては、当初は8月22日に着手する予定だったが、装置に接続するパイプ5本の配置順を誤っていたことが直前になって判明。東電は、作業を下請け任せにし、確認ミスが重なったことなどが原因だとして、対策を示した上で9月10日に着手していた。  着手から回収までは約2週間を見込む。「耳かき1杯」程度とされるデブリ3グラム以下を回収し、分析した上で、1~3号機に大量に堆積するデブリの本格的な取り出しの参考にする目的としている。   ◇

◆修理どころか回収すら見通せない

 東京電力福島第1原発の2号機の溶融核燃料(デブリ)の微量を採取する計画はまたもつまずいた。2号機ではこれまで、格納容器内の調査を進め、デブリとみられる堆積物の映像も公開されてきた。カメラの映像が見えなくなった原因は不明だが、強い放射線の影響も考えられる。

東京電力福島第1原発

 「不具合の原因が分かるまでは進めない」「調査結果によってどうするか考えたい」。東電の担当者は17日の記者会見で、原因と再開見通しを説明できなかった。カメラの回収や修理ができるのかも答えられなかった。  東電が10日に作業の着手に入って以降、15日までは順調だった。釣りざお式装置のアームを伸ばしていき、小石状のデブリをつかみ取る器具をたらし、デブリへの接触までは確認できた。  16日は作業を休み、17日にもデブリを採取できる手はずになっていたが、映像が途絶えた。採取装置を遠隔操作するため、映像がなければ採取することはできなかった。

◆強い放射線が機器に影響を与えた可能性も

 東電は「原因は分からない」とするが、要因として考えられるのは、格納容器内の強い放射線だ。  2017年、18年、19年の調査では、格納容器から圧力容器の土台までで最大毎時約80シーベルトを計測。人がその場に5分程度いるだけで、死亡するレベルになっている。低い場所でも毎時約6シーベルトだった。

東電本店

 放射線は電子機器に影響を与え、誤作動や故障の原因になることが知られている。東電はこれまでの線量調査を考慮し、累積で約5万シーベルトまで耐えられるカメラを用意した。19年の調査よりも「性能を落としたのではないか」と問われた担当者は「格納容器内の線量を毎時42、43シーベルトを想定している」と問題はないとした。

◆わずか3グラム以下の取り出しすらままならず

 デブリの採取は当初、21年に着手予定だったが、装置の開発にてこずり、3年延期されてきた。わずか3グラム以下のデブリ採取でも着手延期や作業中断が続き、困難を極めている。1〜3号機に堆積する推計880トンのデブリの本格的な取り出しの厳しさを物語る。  事故収束作業をチェックしている原子力規制委員会の山中伸介委員長は11日の記者会見で、採取作業についてこう予想していた。「作業は安全第一で進めてもらいたい。技術的なトラブルというのは今後も発生する可能性はある」 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。