高齢者雇用のセミナー 多くの人が詰めかけ
長く働き続ける人が増えるなか、東京都が開く高齢者雇用のセミナーには定年後を見据えて多くの人が詰めかけています。
東京・渋谷区で開かれた14日のセミナーでは、企業で人事などを担当してきた講師が「これからのシニアの労働市場」をテーマに講演しました。
このなかで、人手不足が深刻化する中小企業を中心にシニア人材のニーズが高まっていることや、これまで培ってきた経験や能力を生かすため自分の強みをきちんと認識することが大事だと説明していました。
今回の参加者は、こうした5日間のプログラムを通して自己分析の方法や面談のコツ、中小企業に再就職した先輩の体験談を聞きいて、セカンドキャリアの準備をどう進めるか学びます。
対象は55歳以上ですが、今回の参加者のおよそ8割は定年前の人たちで、30人程度の定員に対して85人の応募があったということです。
60歳以上の労災による死傷者 過去最多の3万9702人
一方で、厚生労働省によりますと、仕事中の事故で死亡や4日以上休むけがをした60歳以上のシニアは、去年3万9702人と過去最多となり8年連続で前の年を上回りました。
そして、労災による死傷者に占める60歳以上の割合は年々、増えていて去年は29.3%とこちらも過去最高でした。
労災は年齢を重ねるほど発生しやい傾向にあり、60代以上と30代を比べると、男性でおよそ2倍、女性でおよそ4倍起きやすく、治療のために休む期間も若い人に比べて長びく傾向があるということです。
また、60歳以上の労働者の労災を種類別にみると、「転倒」が最も多い40%を占めました。足のもつれや物にあたってつまずいたケースや、凍結した通路や作業場にこぼれていた水や油で滑ったケースなどが目立つということです。
次いで、足場や脚立から落ちるといった「墜落・転落」が16%、重い物を持ち上げる時に腰や腕を痛めたなどの「動作の反動・無理な動作」が11%となりました。
厚生労働省は「年を取るにつれて一般的に身体機能が低下し転倒しやすくなるほか、特に女性は加齢とともに骨折のリスクが高くなる」として注意を呼びかけています。
「シニアの働きやすい職場環境の整備」進める企業も
働く高齢者が増えるなか、けがをせず長く安全に仕事ができる職場づくりを進める企業があります。
ビル設備の保守や清掃を手がける静岡県の「セイセイサーバー」はおよそ370人いる従業員の平均年齢は55歳です。
65歳以上が40%を占め、最高齢は88歳です。高齢の従業員のなかには体力面で不安を感じる人がいて、つまずいて転びけがをする人も出ていることから、会社では「シニアの働きやすい職場環境の整備」に力を入れています。
3年ほど前からは社長や労務担当者が月に数回、現場を直接、訪れて従業員から意見を聞き、これまでに転倒しそうな危険な場所には、目立つようテープを貼ったり段差をなくす台を設けたりしました。
熱中症対策も
また、ことしは従業員からの熱中症を心配する声を受け、会社が費用を負担して夏に入る前から扇風機付の作業着や首回りを冷やすネッククーラーの支給を始めました。
こうしたなか、ネッククーラーをつけて建物の外階段で清掃をしていた72歳の男性従業員が、ふくらはぎをつって動けなくなり、帰宅後も体のだるさを感じるといった熱中症の症状が出ました。会社では従業員に対して、こまめに水を飲み休憩を取るようにするなど呼びかけ、男性も体調の管理を徹底するようにしています。
セイセイサーバー 長田きみの社長
「年齢ごとに改善点は違うので現場に出向いてひとりひとりの生の声を聞く姿勢をとても大切にしています。会社が安全衛生を押しつけるだけでは改善につながりません。シニアに長く勤めてもらうためにもこうした取り組みが必要だと思います」
専門家“シニアひとりひとりの体調面への気配りが重要”
定年後の働き方について詳しい「定年後研究所」の池口武志所長は、シニアの人たちについて、自身の健康状態や体力、親の介護や孫の世話といった家庭の環境などで個人差が大きいと指摘します。
その上で労災防止に向けた企業側の取り組みについて「杓子定規なルール運用をするのではなく、現場の上司などによるシニアひとりひとりの体調面への気配りがより重要だ。会社をあげてシニア社員が働きやすい職場環境の整備に取り組んでいくことが会社全体の生産性向上、中長期的な発展のためには不可欠な要素だ」と述べました。
一方、働くシニア側については、「労災事故に遭った人の多くは『まさか自分に限って、こんな場所で』という形が非常に多いと思う。昔のように自分の体力や反射神経を過信せず、年相応の注意深い行動を心がけていく必要がある。また、40代50代からの生活習慣の乱れが60代になって重篤な症状や病気につながり職業人生を縮めていくことになるので早い時期から生活習慣の改善を図っていくことが重要だ」と話しています。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。