北海道旭川市の中学2年、広瀬爽彩さん(当時14)がいじめを受け自殺した問題で、市は13日、いじめと自殺の因果関係を認めた再調査委員会の報告書を公表した。「被害者が心身の苦痛を感じる行為」をいじめとする「いじめ防止対策推進法」の定義の理解が学校関係者に欠けていたと分析し、心身の苦痛を正しく評価するよう求めた。

また同法は各学校に「いじめ防止対策組織」の設置を義務付けているが、現場では多忙を理由に明らかに形骸化していると指摘。全国各地の教育委員会に対策組織の状況を調査し、適切に運用するよう提言した。

報告書によると、広瀬さんは2019年の中学入学後からクラスメートの悪口や先輩からの性的要求など、7件のいじめを受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症。広瀬さんのSNSへの投稿の詳細な分析などから、恐怖心や自尊感情の低下などが継続し「いじめがなければ自殺は起こらなかった」と結論付けた。

広瀬さんには自閉スペクトラム症(ASD)などの特性があり、それに起因する言動のためクラスで孤立し、先輩との関係に居場所を求めたと分析。学校は、他の生徒とのトラブルを把握していたが、加害生徒側の問題行動との認識にとどまり、広瀬さんが心身の苦痛を感じていたことを正しく評価しなかったとした。

広瀬さんの学校では、対策組織の定期的な開催が確認できず、実効性がなかったと断じた。

今津寛介市長は、再調査結果を報告した市議会で「娘が抱えていた特性が身近にあり、いじめはどこの地域でも起こり得ることだと感じていただき、同じことが繰り返されないよう役立ててほしい」とする母親のコメントを読み上げた。

公表された報告書は約370ページで、いじめ行為も具体的に記述された。詳細な発表となった理由について、母親は、臆測や誹謗(ひぼう)中傷が一般市民にも及んだためと説明。「今回の公表範囲は私たちの事案に限ったことであると認識していただきたい」とコメントしている。〔共同〕

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。