国は、東京電力福島第一原子力発電所の事故で避難指示が出された自治体などの復興事業を支援するため「福島再生加速化交付金」を拠出し、福島県と原発周辺の市町村などは事業が複数年度にわたる場合これをもとに基金をつくって市街地の造成や災害公営住宅の建設などを進めています。

会計検査院は、令和4年度末時点で県と14の市町村などが保有する262の復興事業に関する基金合わせて806億円余りを検査しました。

その結果、すでに終わった126の事業の基金の残額合わせて66億円余りのおよそ3分の1に当たる21億円余りが、基金の管理運営について定めた要領に反して、事業完了から1年以上たち今後使用する見込みがないのにそのままになっていたことがわかりました。

このため会計検査院は、所管する国土交通省と農林水産省、それに文部科学省に対し、基金を保有する南相馬市、浪江町、大熊町、楢葉町、飯舘村に国庫への返納を指示するよう求めました。

未返納だった交付金のうち厚生労働省が所管していたおよそ800万円については、所管を引き継いだこども家庭庁が指示し、すでに国庫に返納されたということです。

「福島再生加速化交付金」とは

「福島再生加速化交付金」は、東日本大震災に加え原発事故でも被災した福島県内の自治体の復興を加速させるため、福島復興再生特別措置法に基づいて平成25年度に創設されました。

対象は、福島県と県内の市町村や一部事務組合で、令和4年度までに合わせて6300億円余りが交付され、子育て世帯の定住促進など8項目の復興事業に使われています。

このうち、被災地域への住民の帰還、長期避難者の生活拠点の形成、健康不安への対策の3項目については、複数年度にわたる「基金型」の事業が認められていて、市街地の造成や災害公営住宅の建設のほか、農業関連施設の整備や学校への太陽光発電設備の整備、放射性治療薬の研究開発などの事業が進められてきました。

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