北海道は9日、「北海道アイヌ生活実態調査」の結果を公表した。アンケートで差別を受けたと答えた人が約3割いて、差別を受けた場面について問うたところSNS上の書き込みなどを挙げており、ネット上で差別が広がっている実態が浮き彫りになった。

 調査は、アイヌの人たちの生活実態を把握し、施策に生かすため1972年に始まり、おおむね5~7年おきに実施されている。市町村が把握できた人たちが対象となり、道内で暮らすすべてのアイヌの人の数とは一致しない。今回は、2023年10月1日時点で確認できた5322世帯、1万1450人で、前回調査(17年)より249世帯、1668人減った。道は、減少理由について、死亡などにともなう自然減に加え、個人情報保護への意識の高まりで、調査への協力を得られなかった人も増えていると分析する。

 15歳以上の世帯員を対象にしたアンケート(有効回答数472)では、差別の実態について聞いた。この3~4年にアイヌ民族であることを理由に差別を受けたことがあると答えた人は全体の29.0%。受けた場面は、今回の調査から選択肢に加えた「SNSの書き込み等」が最も多く31.6%だった。その他(21.1%)、職場(15.8%)、就職のとき(10.5%)と続き、前回18.2%だった「結婚のことで」と答えた人はいなかった。

 今回の調査では新たにアイヌ施策推進法の認知度についても尋ねた。法律が制定されたことを知っており、内容もおおむね理解している人は14.6%。制定は知っているが、内容はよく知らないと答えた人は48.3%。制定自体を知らない人は34.3%だった。同法にある「差別禁止」については36.7%が認識していたが、60.8%が知らなかった。(長谷川潤)

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