長崎の原爆投下時に国の指定区域外にいた「被爆体験者」が長崎市などに被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟で、長崎地裁は9日の判決で、原告44人(4人が死亡)の一部を被爆者と認定し、交付を命じた。2021年の広島高裁判決に続き、国の救済範囲が不十分だとして被爆者認定の対象拡大を促した。
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被爆者の認定は被爆者援護法に基づく。被爆地の一定地域にいた人のほか「身体に放射能の影響を受けるような事情があった者」を対象と規定する。
長崎では爆心地から半径12キロ以内で国が指定する「援護区域」の外にいた人は放射線の影響を認めず、「被爆体験者」として健康診断などの支援が被爆者と比べて限定されている。
訴訟では、被爆体験者側は原爆投下後に雨や灰など放射性物質を含む降下物に触れたと主張。原爆投下後に米国の調査団が残留放射線を広い範囲で検出した記録などを証拠として提出した。
国の基準に応じて被爆者健康手帳の交付を担う県や市は、原告が主張する被爆態様や科学的根拠などについて「これまでの訴訟と異なる判断をする事情はない」と反論した。
長崎の被爆体験者の提訴は今回が3回目。2007年と11年に起こした訴訟でも「12キロ以内にいれば放射線の影響を受ける事情があった者に該当する」などと訴えたが、科学的根拠が乏しいとして、いずれも最高裁で敗訴が確定していた。
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