国の援護区域外で長崎原爆に遭い、被爆者と認定されていない「被爆体験者」44人(うち4人死亡)が、長崎市などに被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟で、長崎地裁が9日に判決を言い渡す。原告が「放射能の影響下」にあったかどうかが争点だ。投下から79年が過ぎ、原告は「年齢的にも最後のチャンス。『あなたたちは被爆者』と言ってほしい」と願う。
被爆者援護法は、被爆地の一定区域にいた人らに加え「放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」を被爆者と定義。長崎では、爆心地から半径12キロ圏内のうち、縦に長い援護区域の外にいた人の放射線影響を認めず、同法の枠外で被爆体験者として精神疾患やその合併症などへの医療費支給にとどめている。
体験者は過去に2度訴えを起こし、いずれも敗訴が確定。今回の訴訟で弁護団が注目するのが、広島原爆の援護区域外で「黒い雨」に遭った人々の勝訴が確定した2021年の広島高裁判決だ。
放射能の影響について「健康被害が否定できないことを立証すれば足りる」と幅広く認め、原告全員を被爆者と認定。新たな認定基準の策定につながった。
爆心地から北東約10.2キロにいた原告の山内武さん(81)は長年胃や肝臓に病気を抱え、通院が欠かせない。「同じ被爆地で同じ原爆に遭ったのに、区別されるのは納得がいかない」と憤る。
原告側は、原爆投下後に米調査団が残留放射線を広い範囲で検出した記録を証拠提出しており、三宅敬英弁護士は「長崎でも放射性降下物が降り注ぎ、黒い雨の広島と状況は重なる。判決の理屈も当てはまるはずだ」と主張している。
今年8月9日の「原爆の日」、体験者と初面会した岸田文雄首相は武見敬三厚生労働相に「具体的な対応策の調整」を指示した。判決は政府の対応に影響を与える可能性もあり、注目される。〔共同〕
被爆者援護法 旧原爆医療法と旧原爆特別措置法を統合し、1995年施行。原爆放射能による健康被害は他の戦争被害と異なる「特殊の被害」とし、被爆者の援護策を国の責任で講じると定める。直接被爆(1号)や投下後2週間以内に広島、長崎に入市(2号)、身体に放射能の影響を受けるような事情の下にあった(3号)、胎内で被爆(4号)のいずれかに該当すれば、「被爆者健康手帳」を交付。医療保険の自己負担分を国費で賄い、疾病に応じ手当を支給する。鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。