大阪府は、能登半島地震で被災した子どもを大阪・関西万博に招待すると発表した。原資には、ふるさと納税を通じて府外の個人・企業から募る寄付を充てる。なぜ外部頼みか。被災地支援の本気度はいかほどか。万博は安全面も問題視される。本当に被災地のためになるのか。(宮畑譲)

◆ペア80組160人招待…ふるさと納税3000万円集まれば

 「地震でつらい思いをした子どもたちに、少しでも笑顔になってもらう。未来社会を見て元気になってもらいたい。そのために万博を含む大阪の観光への招待事業を行う」  吉村洋文知事は先月の定例会見でこう述べ、被災地の支援事業として万博招待の計画を明らかにした。

吉村洋文大阪府知事(資料写真)

 内容はこうだ。招く時期は来年7〜8月。対象となるのは奥能登地域の輪島、珠洲、能登、穴水の2市2町の小学5、6年生と中学生、その保護者。2泊3日の宿泊費や交通費、万博の入場料などの経費をふるさと納税で賄う。  ただし招待できる人数は集まった金額によって変わる。目標の3000万円が集まれば、ペア80組160人を招くことができるという。

◆招待事業費は1500万円、府の予算から出せばいいのに

 集まった金額全てが宿泊費などに充てられるわけでもない。府の担当者は「こちら特報部」の取材に「返礼品となる万博の入場券の代金とふるさと納税の委託経費を引き、実際に招待事業に使う費用は半分程度とみている」と答える。仮に3000万円が集まっても、招待に使われるのは約1500万円ということになる。  府の税金を使わないという点も引っかかる。意義ある事業なら、1500万円を予算から出せば事足りるのではないか。その点も府の担当者に聞くと、「財源について法的な決まりはなく、いろいろな方法があり得る。コンセプトの問題で、最後は知事の判断」ということだった。

◆「子どもをダシに、万博批判をかわそうする狙い」

 大阪在住のジャーナリスト、今井一氏は今回の試みに対して厳しいまなざしを向ける。「子どもをダシに使い、万博批判をかわそうとする目くらましの手法。欺瞞(ぎまん)が過ぎる」  ふるさと納税を通じた寄付に頼る点も「万博の経費が増えたと追及されないための方策かもしれないが、これまで万博につぎ込んだ無駄なお金からしたら、数千万円なんてわずかな額」と指摘し「来夏に万博へ招くくらいなら、府が自腹を切り、今年の夏休みにユニバーサル・スタジオ・ジャパンに招待してあげればよかった」と突っ込む。

大阪・関西万博公式キャラクターのミャクミャク

 大阪絡みの寄付といえば昨年にも物議を醸した。  関西を本拠地とするプロ野球の阪神とオリックスの優勝パレードに必要な費用を大阪府などが呼びかけ、クラウドファンディング(CF)で募集した。このパレードに絡め、万博のPRがもくろまれた。しかし必要経費5億円のうち、CFで集まったのは約1億円。残りは企業などの協賛金で賄うことになった。

◆大阪の教職員は爆発事故や医療体制を不安視

 一方で安全面の不安も指摘されるのがこの万博だ。  会場施設の建設現場では今年3月、埋め立てられた廃棄物から出たメタンガスに工事中の火花が引火する爆発事故があった。  大阪教職員組合は6月、爆発事故に加え、避難計画や緊急時の医療体制に不安があることなどから、学校単位での万博招待事業の中止を求めた。

大阪府咲洲庁舎から望む「大阪・関西万博」会場の人工島・夢洲

 組合のある役員は「会場の夢洲(ゆめしま)の西側はもともとゴミの最終処分場で、今も臭いやほこりがあると聞く。石川県の人はそういったことを知っているのだろうか。知らずに来て驚かないか心配だ」と漏らす。  今井氏は強く訴える。  「もう万博は失敗している。子どもをダシにし、批判をそらそうという小ざかしい思いが大阪府民の本意だと捉えないでほしい」 

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