医療現場では、特定の地域や診療科に医師の数が偏り、地方の病院などで医師不足を引き起こすいわゆる「医師の偏在」が深刻な問題となっています。

こうした中、厚生労働省は5日、偏在の解消に向けて具体的な対策を考える対策推進本部を設置し、本格的な議論を始めました。

会議では武見厚生労働大臣が、「急激な人口構造の変化や医師の高齢化の現状を踏まえると、偏在対策はもはや待ったなしの課題だ。偏在を何としても解消するという強い覚悟と決意を持って精力的に検討していく」と述べて、部署を横断して抜本的な対策に取り組む考えを示しました。

厚生労働省は新たな対策として、開業医が多い地域での新規の開業を抑制するため、開業を希望する医師に在宅医療や救急対応を担うといった一定の要件を設けられないか検討する方針です。

また医師が少ない地域を対象に、医療機関に対する国の財政支援の強化や、大学の医学部で、卒業後に一定期間、特定の地域での勤務を義務づける「地域枠」の拡大なども検討する見通しです。

厚生労働省は今後、専門家を集めた検討会でも意見を聞いたうえで、年末までに対策を取りまとめることにしています。

「医師偏在指標」とは

医師が都市部などに偏り地方の病院で不足する「医師の偏在」を客観的に示すため、厚生労働省は「医師偏在指標」という数値を公表しています。

医療の需要や患者の流出と流入、それに医師の年齢や性別の人数などを踏まえて算出しています。

この医師偏在指標を各都道府県ごとに比較し、数値が低い16の県を「医師少数県」、数値が高い16の都府県を「医師多数県」としています。

ことし1月に公表されたデータでは、比較的、東日本に「医師少数県」が多く、西日本は「医師多数県」が多く見られます。

厚生労働省はあくまで県全体の数値であり、その中でも医師の多い地域と少ない地域に分かれるほか、相対的な指標であるため、医師多数県で医師が余っているというわけではないとしています。

このほか、全国に300以上ある二次医療圏ごとの医師偏在指標のほか、診療科別で産科や小児科の指標も公表しています。

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