モチーフの質感や反射の映り込みまで、まるで写真のように精巧に表現する鉛筆画家大森浩平さん(30)=岡山市=の作品が話題だ。交流サイト(SNS)に投稿すると大反響を呼び、今年5~6月には自身初の個展を開催するまでに至った。大森さんは「自分が好きなことを突き詰めた作品を通じ、人はいろんな可能性を持っているんだと感じてほしい」と話す。
きっかけは23歳だった2017年、大森さんの作品を姉がツイッター(現X)に投稿したことだ。約280時間かけて水滴のついたボルトとナットを描き、金属の質感や光沢までリアルに再現した作品に当時約30万件の「いいね」が付いた。大森さんは「今は自分で発信できる時代だ」と、SNSを中心にした制作活動を始めた。
まず題材を写真に収め、これを基に描く。写真の出来栄えが作品の完成度を左右するため「美しいと思う瞬間が撮れるまで時間をかける」。
幼少期から一つのことに集中するのは得意だが、複数のことを同時に進めるのが苦手だった。デザインを学べる大学に進学するも、多くの課題をこなすのが難しく中退。精神的な不調で22年に活動も休止した。
そんな中、声をかけたのが岡山県瀬戸内市立美術館の岸本員臣館長だ。「作品を見て衝撃を受けた」と23年、鉛筆画から離れていた大森さんに個展の開催を持ちかけ、大森さんが「求めてもらえるなら」と応じた。
腕時計や蛇口など15点の作品を披露した個展は盛況で、同館の個展では異例の来場者1万人を突破。岸本さんは「次は全国に感動を届けたい」と語り、県外での個展開催を目指す。
大森さんは「来場者の反応を直接見られて励みになった。今後も驚いてもらえる作品を描きたい」と意気込んでいる。
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