小林製薬の紅麹の成分を含むサプリメントをめぐる問題では、会社側が健康被害が疑われる情報をことし1月に把握してから公表するまでに2か月以上かかり、国などへの報告の遅れが指摘されました。

これを受けて消費者庁は、食品表示法に基づく内閣府令の「食品表示基準」を改正し、1日から機能性表示食品を製造・販売などする事業者に対し、健康被害が疑われる情報を把握した場合は、因果関係にかかわらず速やかに保健所などに報告することを義務づけます。

違反した場合には、営業の禁止や停止の行政措置が可能となります。

2026年9月からはサプリメントを加工する工場では、安全で質の高い製品を作るための「適正製造規範=GMP」に基づいた製造管理を義務化するほか、製品のパッケージに、摂取する上での注意事項などを具体的に表記するように見直します。

また、特定保健用食品=トクホでも健康被害情報の報告については1日から義務化されます。

会社側に健康被害の疑いを伝えた医師「一歩前進」

小林製薬の紅麹の成分を含むサプリメントを摂取した人が健康被害を訴えている問題で、会社は8月25日時点でのべ484人が入院し、死亡との関連を調査している人が118人いると報告しています。

日本大学医学部の阿部雅紀主任教授の診療チームは、問題が明らかになる前に複数の患者を診察し、健康被害の疑いがあると会社側に伝えていました。

報告の義務化について阿部主任教授は、「製品を摂取し続け腎障害を起こしたという患者が相次いで受診したため、健康被害を強く疑ったが、製品によって腎障害が起きているのか、原因物質も特定されていない中で会社に強くは言えない状況だった。もし企業からの報告が徹底されていれば、各地で同じような健康被害の報告が寄せられているとわかるので、より強い注意喚起ができたと思う。健康被害の情報がすぐに行政に報告され、共有される仕組みができたことで一歩前進した」と評価しました。

その上で、「受診した患者のなかには入院が必要になった人やいまも腎臓の機能が戻らず、治療を続けている人も多い。健康食品による被害はあってはならず、製造や販売する企業は医療機関から報告があれば責任をもって対応してほしい」と話していました。

義務化のポイント

今回の改正では、機能性表示食品の健康被害の情報について、事業者が把握してから15日以内に報告することを求めています。

具体的には
▽同じ所見の症例が短期間に2件以上起きた場合や、
▽医師が重篤な症例として1件でも判断した場合には、因果関係が不明でもすべて報告の対象になるということです。

また、消費者や医師などから健康被害の情報を収集できる体制をつくることも、事業者に求めています。

消費者庁によると、機能性表示食品の製造や販売などをしている事業者はおよそ1700あり、製品数はおよそ7000あるということです。

消費者委員会の委員を務め、食の安全に詳しい奈良県立医科大学の今村知明教授は、「医師が健康被害のおそれに気づけるかや、専門的な知識のない企業が対応できるのかなど実務的にはさまざまな課題があり、始まってみないと分からない面があります。サプリメントなど、毎日食べ続けるような健康食品の規制のあり方については、引き続き議論を続ける必要があると思います」と話していました。

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