金融機関などの偽のサイトに誘導して個人情報を盗む「フィッシング」の対策として、警察庁は、生成AIを活用してサイトが本物かどうかを見分ける仕組みを導入する方針を決めた。

 フィッシングの手口は、インターネットバンキングの利用者が預金を別の口座に不正に送金される事件で多く使われる。昨年の不正送金の被害件数は前年の4.9倍の5578件、被害額は5.7倍の87億3千万円だった。

 フィッシングに使われる偽サイトに関する情報は、都道府県警などから警察庁に寄せられる仕組みで、昨年は約59万件にのぼった。現在は職員が本物かどうかを判別しているが、民間の生成AIの技術を活用し、職員の負担を軽くする。

 3月に公表された大学教授や弁護士による有識者検討会の報告書は、フィッシング対策に最先端技術を活用すべきだとする一方、誤った判定をされたサイトの運営者らからの申告を受け付ける窓口を設置することが重要だと提言。警察庁は今後対応を検討する。

 深刻化するサイバー犯罪への対応で、警察庁は捜査や情報分析の体制を強化する方針だ。警察庁職員は32人の増員を要求。サイバー特別捜査部(兼務を含む)は300人超、サイバー警察局などは約250人の体制だが、それぞれ十数人を加えて計約600人体制とする。都道府県警の警察官320人の増員も要求し、潜在化するサイバー攻撃による被害の実態把握などを狙う。

 また、サイバー特捜部などがネット上の公開情報と発信元の特定が難しいダークウェブなどの情報を集約し、分析する体制を強化する。事件に関わる疑いがある人物の関係性や暗号資産の流れを分析するための資機材を整備し、分析能力を上げるという。

 警察庁は増員や資機材の整備などのサイバー犯罪対策で、来年度予算の概算要求に59億6200万円を盛り込んだ。(板倉大地)

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