台風10号は九州を北上した後、30日午後にも四国に最接近する見通しだ。31日以降に低速で四国を東へと横断し、近畿地方に近づくとみられる。局地的な豪雨をもたらす「線状降水帯」が西日本から東日本の広範囲で発生し、災害の危険性が急激に高まる恐れがある。

東海道新幹線の三島―名古屋間の計画運休を知らせるJR名古屋駅のモニター(29日午後)=共同

交通への影響も大きく、JR各社によると、東海道新幹線が30日に三島―名古屋間で終日運転を取りやめるほか、九州新幹線も全線で運休する。航空も九州地方などの空港を発着する一部の便で同日の欠航が決まっている。

気象庁によると、台風10号は30日午前9時に大分県別府市近辺を進み、同午後9時には松山市の東約40キロの地点を中心とする半径95キロの円内に達する見込み。同午後9時時点の中心の気圧は992ヘクトパスカル、最大風速は23メートル、最大瞬間風速は35メートルを予想する。

台風10号は動きが非常に遅いため、西日本を中心に長時間にわたって猛烈な風やしけが続き、総雨量が多くなるとみられる。

30日は九州北部や四国にとどまらず、台風から離れた東海地方でも線状降水帯が発生し、大雨による災害の危険度が急激に高まるおそれがある。

31日午前0時までの24時間に予想される降水量は多い所で、四国400ミリ、九州北部、東海300ミリ。30日の予想最大風速(最大瞬間風速)は九州北部、四国で25メートル(35メートル)となっている。

大雨に加えて非常に強い風が吹くため、気象庁は暴風や土砂災害、低い土地の浸水、川の氾濫などに厳重に警戒するよう呼びかけている。発達した積乱雲の近づく兆しがある場合には、建物内に移動するなどの安全確保も求めている。

突風で飛ばされ電線に引っかかった飛来物(29日、宮崎市)=共同

人的被害も各地で相次ぎ、九州の福岡、佐賀、長崎、大分、宮崎、鹿児島の7県では29日までに強風にあおられて転倒するなどして80人以上がけがをした。鹿児島港の海中で男性の遺体が見つかったほか、愛知県蒲郡市の住宅が土砂崩れで倒壊し、住んでいた家族5人が生き埋めになった。2人は救助されたが3人が死亡した。

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