台風10号は29日午前8時ごろに鹿児島県薩摩川内市付近に上陸した後、熊本、長崎両県を北上した。非常に強い勢力は弱まったが、30日にかけて九州北部を東へ横断し、四国か中国地方へ進む見込み。九州のほか、関東や東海、四国の太平洋側各地で大雨になる所があり、気象庁は土砂災害や低地の浸水、河川の氾濫に厳重な警戒を呼び掛けた。

鹿児島県(奄美地方を除く)に出ていた暴風と波浪の特別警報、薩摩川内市などに出ていた高潮の特別警報は、29日午前10時半に警報・注意報に切り替えられたり、解除されたりした。

台風接近に伴う各地の大雨などでは、愛知県蒲郡市で27日夜、一家5人が土砂崩れに巻き込まれ、3人が死亡。鹿児島市では28日夜に港で作業船が転覆して男性船長(64)が行方不明となり、その後、付近で漂流中の遺体が見つかった。徳島県上板町では29日午後、2階建て民家の屋根などが崩れ、80代男性が死亡した。このほか、宮崎県で35人、鹿児島県で24人が重軽傷を負うなど各地で被害が出ている。

宮崎、鹿児島、大分の各県では29日未明から朝にかけ、発達した雨雲が連なる線状降水帯が相次いで発生。宮崎県えびの市では午後9時までの48時間雨量が814ミリに上った。鹿児島県枕崎市では午前0時55分ごろに最大瞬間風速51.5メートルを観測した。

大分県由布市では宮川が氾濫。同市と宇佐市、国東市、豊後高田市では5段階の警戒レベルで最も高い緊急安全確保が発令された。

同日夜には香川・徳島両県や兵庫県・淡路島付近で線状降水帯が発生した。香川県東かがわ市で午後6時35分すぎまでの1時間に103.5ミリ、兵庫県南あわじ市で午後8時25分までの1時間に116.5ミリの猛烈な雨が降り、いずれも観測史上最多記録を更新した。

線状降水帯は、東海で30日午前まで、九州北部と山口県では同日の日中まで、四国では夜まで発生する可能性がある。

10号は29日午後9時、長崎県島原市付近をゆっくりと北北東へ進んだ。中心気圧は990ヘクトパスカル、最大風速30メートル、最大瞬間風速40メートル。半径110キロ以内が風速25メートル以上の暴風域、半径390キロ以内が風速15メートル以上の強風域。

30日午後6時までの24時間予想雨量は多い所で、四国400ミリ、東海と九州北部300ミリ、関東甲信250ミリ、近畿と中国200ミリ、九州南部150ミリ。その後、31日午後6時までの同雨量は、四国400ミリ、東海と近畿300ミリ、関東甲信200ミリ、中国150ミリ、九州北部120ミリ。

台風10号の影響で飛ばされたものを撤去する作業員=29日午後、宮崎市

台風10号の影響で、冠水した道路で立ち往生する車両=29日午後、熊本県玉名市(一部画像処理しています)

台風10号の影響で、増水してあふれた境川(右)=29日午後、熊本県玉名市

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