警察庁は口座情報などを盗む「フィッシング」に使われる偽サイトを生成AI(人工知能)で判別するシステムを構築する。増加する偽サイトを人間の目で判別するには限界があり、AIを活用し効率化させる。盗まれた口座情報は不正送金に悪用されるケースが多い。偽サイトを排除し被害の抑止をはかる。

フィッシングは金融機関などの偽サイトに誘導し、インターネットバンキングやクレジットカードに関連する情報を盗む手法。監視団体のフィッシング対策協議会(東京)によると、2023年に寄せられた報告件数は約120万件で18年から約60倍に増えた。

盗まれた情報はカードの不正利用やネットバンキングの不正送金に使われる。23年のネットバンキングの不正送金被害は約87億円で過去最悪だった。

偽サイトはネット上の住所にあたるドメインが正規サイトと異なる、日本語に不自然な点がある――といった特徴がある。現在は寄せられた情報をもとに警察庁の職員が目視で判断しているが対応が追いつかず、有識者検討会でAI活用を検討してきた。

新たなシステムでは偽サイトの特徴を生成AIに学習させ、人に代わってAIが真偽を識別する。警察庁はAIの構築や検証に必要な費用として、25年度概算要求で約2600万円を計上した。判別の精度を高めた後に本格的な運用を始める見込みだ。

詐欺グループの摘発に向けては、犯罪収益のマネーロンダリング(資金洗浄)に悪用されるケースが多い暗号資産(仮想通貨)の流れを追跡する体制を整える。民間業者が提供する仮想通貨の分析ツール利用料を概算要求に盛り込んだ。

仮想通貨の監視能力を高める背景には、SNSを通じて集散する新たな組織形態「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の活発化がある。首謀者の周辺に犯罪収益が集まる傾向があることから、仮想通貨を含め流れを追う考えだ。

今年1月に発生した能登半島地震を踏まえた災害対策も強化する。同地震では被害が大きかった地域につながる主要道路が寸断され、救助や支援活動の妨げになった。

警察庁は悪路走行が可能で、大型の資機材を積むことができる四輪駆動車を47都道府県警に1台ずつ配備する。空路輸送を想定した小型で軽量な電動のこぎりやチェーンソーの整備も進める。

29日に公表した同庁の25年度予算の概算要求は、一般会計で24年度当初予算比5.6%増となる3284億6300万円を計上した。2025年国際博覧会(大阪・関西万博)の警備費用として20億9400万円を盛り込んだ。

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